中野信治が今季F1の勢力図を詳細解説 「レッドブルで何が一番進化しているかと言えば......」
【メルセデスはPUがやや劣る?】 各チームのマシンのデータを見ると、レッドブルとフェラーリはコーナーもストレートも速いですが、メルセデス、マクラーレン、アストンマーティンはどちらかといえばコーナーリングマシン。 メルセデスのマシンは悪くないですが、パワーユニット(PU)の性能が影響しているのかなと感じます。ホンダがPUを提供するレッドブルやフェラーリに比べて、メルセデスは若干パワーが落ちているような印象です。 あとメルセデスは昨年から燃料が重いときのペースがよくない。メルセデスのマシンはダウンフォースがあるので無理をすれば1周速いタイムを出すことはできますが、コーナーでかなり頑張らないとタイムを稼げない。 マシンが重い状況で無理をするとタイヤをいじめることになるので、結局、レース序盤はペースをコントロールしなければなりません。そこが弱点となっていますが、レース中盤以降にマシンが軽くなるとトップグループと遜色ないペースで走れています。 ウイリアムズは昨シーズン、直線がすごく強かったですが、今年のマシンはオーソドックスなつくりになって、昨年までのストレート区間でのアドバンテージがなくなっているように見えます。 直線が速いのはハースです。細かい空力は改善されていますが、基本的に昨年型と大きく変わっているようには見えません。おそらくタイヤに厳しいところも引き継いでいると思いますが、そのマシンを新しく代表となった小松礼雄さんが最大限に力を発揮するようにまとめあげている印象です。 第2戦のサウジラビアGPでは直線の速さを活かして、うまく後続を抑えてポイントをとりました。続くオーストラリアGPでもダブル入賞を果たしています。
【角田裕毅のRBは入賞圏で戦える】 角田裕毅選手がドライブするRBは予選の走りは悪くなかったですが、開幕からの2戦は決勝で苦しみました。テストではタイヤのデグラデーション(性能劣化)やクルマの動きもそんなに悪いように見えませんでした。RBはマシンの最適化がまだできていないだけだと思います。 2024年シーズンに向けてレッドブルとの関係を深め、マシンのいろいろな部分を変えてきましたが、スイートスポットが見つけられていないというのが現状だと思います。第3戦のオーストラリアGPで7位に入り、今季初入賞を果たしました。シーズンが進むにつれてマシンの最適化が進めば、アストンマーティンなどと5番目のチームとして入賞圏を争う戦いになるでしょう。 RBは今のところ表彰台争いをするのは厳しいですが、他チームとの差は小さいので、マシンのスイートスポットさえ見つけることができれば、一気に順位を上げてくると思います。あとは、マシンがサーキットに合うかどうか。今のバランスだとトップ10争いになりますが、マシンが合うコースでは5~6番手を狙えるかもしれません。 RBをはじめとする中団グループは、コースによって多少のシャッフルをしながらシーズンが進んでいくと思いますが、レッドブルとフェラーリの「2強」は常にトップを争うところに来ると予想しています。 マクラーレンもマシンがもう少し煮詰まってきたら、「2強」に絡んでくるかもしれません。現状では、マクラーレンは昨シーズン終盤のような速さはありません。今シーズンに向けてマシンをいろいろと改良したところがまだ機能していないように見えます。