大根仁が語る「地面師たち」と「演出家の仕事」 「50代以降は誰かのためになるような仕事をしたい」
それで、今回の現場でも改めて感じたのですが、インティマシーコーディネーターというと、役者の側に立つ人というイメージを持っている人が多いかもしれませんけど、実際は基本的に監督の側にも立ってくれる人です。どういったシーンを撮りたいかの意図を汲みながら、役者とコミュニケーションをとる、という役割。もし役者が演出意図に対して「それはちょっと……」ということがあれば、間に入って緩衝材になりつつ、撮影を進めてくれる。なので、もし“現場の敵”みたいなネガティブなイメージを持たれている方がいるのであれば、それはまったく違います。
――現場における演出家の仕事については、どういう役割だと捉えていますか。
大根:演出の仕事って、究極は2つしかないと思っていて。一つは脚本よりおもしろく撮ること。もう一つは、役者を魅力的に撮ること。テクニカルなことも最終的にはそのどちらかに内包されていくんですよね。
――今回は原作の小説を読みながらキャスティングを考えて、脚本もご自身で書いたということで、ほぼ当て書きだったと。
大根:そうですね。キャスティングについては、これまでに何回か一緒にやったことがある役者は当然として、初めての人だとしても、過去の作品を観たりすると、その役者のポテンシャルも分かるし、リミッターがどこにあるのかもなんとなく分かります。その上で、どういうタイプの芝居だったらリミッターをはずせるのか、感覚として掴めるんですよね。その勘を利かせることも演出家としては大事だと思うので、それが今回はうまくいったのかな。この先もしその勘が鈍くなったら、演出家としては潮時なのかもしれません。
――そして本作では、大根さんが監督を務めた「DENKI GROOVE THE MOVIE?~石野卓球とピエール瀧~」に限らず、公私ともに関係の深い電気グルーヴが2人そろって参加しています。ピエール瀧さんは詐欺師役、石野卓球さんが音楽(劇伴)と。