大根仁が語る「地面師たち」と「演出家の仕事」 「50代以降は誰かのためになるような仕事をしたい」
――登場人物たちを魅力的に描く、という点で意識したことは?
大根:今回のキャスティングが成功した時点で、もう十分に魅力的な作品になるだろうとは分かっていたので、そこからさらに演出なりでキャラクターをどうこう、というのはあんまり考えなかったですね。物語の性質上、観た人に憧れを抱かせたり、「こういう人になりたい」とか思われても困りますし(笑)。
――その点でいうと、物語の根幹である詐欺はもちろん、作中の暴力や殺人といった悪行の数々を魅力的に描くことの倫理観については、どう捉えていますか。 大根:基本的に自分の考えとしては、こう言うと語弊があるかもしれないけど、犯罪や悪事を扱うエンターテインメント作品においては、表現は自由でいい、と思っています。犯罪行為も暴力もファンタジーの一要素として存在させる以上、そこはとことん追求するべきだっていう考えです。中途半端な嘘で嫌な気分にさせるよりは、振り切ってファンタジーとして魅力的に描いた方がいい。今回の暴力や殺人のシーンなんて、リアリティーという意味では全然リアルじゃないでしょう。
そもそも、現実の地面師たちは殺人までは犯してないわけで、そこを突いて、本物の地面師は殺人を犯してないのにおかしい、サイコパスな人間は詐欺師にはならない、みたいな批評を見かけましたけど、この作品はフィクションでありエンターテインメントですよ、っていう。地面師詐欺事件のリアルを追求した作品ではないですからね。まあこれもまた観た人の自由ですけど、それなりに批評性がある識者とされている人がその程度のことを言ってるとガッカリはしますよね。
「瀧さんは詐欺師役です」「じゃあやる」
――本作ではインティマシーコーディネーターとして浅田智穂さんが入っていますが、大根さんは以前にドラマ「エルピス」でもご一緒されています。
大根:「エルピス」の時はそこまでセクシャルなシーンはなかったのですが、プロデューサーの佐野亜裕美さんがインティマシーコーディネーターを入れたいというので、参加してもらいました。個人的にはその「エルピス」の現場が初めてで、非常にやりやすかったですね。