「アニソンは世界を超える」…高橋洋子が「残酷な天使のテーゼ」で“発売当時のまま”の歌唱を続ける理由
いちファンとして見ていた
その時点ですでに発売から10年が経過していた「残酷な天使のテーゼ」。これまでに何度も歌ってきた高橋の代表曲だが、「最初に歌ったときはすっごく難しい曲と思った」と運命的な曲との出会いを振り返る。「みんな歌えるのかな?」という疑問もわいたが、後に「ちょっと難しいぐらいの方が歌い上げたときの達成感もあり、流行るんだと分かった」と述懐する。 アニメは初回放送よりも、後の深夜再放送などでブームに拍車がかかったが、高橋自身は初回放送から見ており、「当初はこれを平日の夕方に流していいものかな」と思ったという。だが「3話目からもうハマっていき、21話ぐらいからは心を痛め、26話で拍手する、という感じでドハマりした」 そんな風にハマったアニメに、自身の歌が流れてくる。「光栄と思いつつ、音と映像がすごく合ってることに感動した」といい、「及川眠子さんの歌詞は音にピタリとはまっていて、プロとしてのクオリティの高さも感じた」と指摘する。 もちろん劇場版も人波に紛れて映画館で鑑賞。「魂のルフラン」が「ここで流れるのか!」と衝撃を受けたという。
最初の印象のままが大事
当然のように、アニソン歌手としての地位も確立。「デビュー当初はバラードシンガーというのが私のアイデンティティだったけど、アニソン歌手はアニメがあっての主題歌であり、アイデンティティは必要ないと分かった」という。 レコーディング当時は譜面に忠実に歌っただけだったが 、「残酷な…」なども当初は気付いていなかったものの、「何年かしてから、ファンは最初に聴いた主題歌の『残酷な…』が好きなんだと分かった。だからそれに気付いてからはちゃんとCDを聞きなおして、忠実に歌うようにした」と明かす。 「年齢を経て声も変わるけど、印象が違えばみんなの夢を壊すことになる。だから最初のCDに忠実に歌うよう、今も心掛けている。特に45歳を過ぎてからは、CDに入っている20代の私のマネをするんですよ」 カラオケなどでもよく歌われるが、本人にコツを聞くと「まずはゆっくりと一音一音を確実に歌う。ただそのままではテンポを戻すと間に合わないので、水面に浮かんだ浮き石を渡るような感じで沈み切らないうちに歌う。それとブレス(息継ぎ)の位置は重要で、毎回息を吸う場所を決めておく。適当に吸っているといつまでたってもうまくならない。あとは自分が歌った音源を聴く作業も大事ですね。どこをどういう風に直すといいか分かるので」と教えてくれた。 実は、さらに詳しいコツをまとめた書籍『高橋洋子のヴォーカル・レッスン 「残酷な天使のテーゼ」「魂のルフラン」をだれよりも上手に歌えるようになる本』(リットーミュージック)を高橋自身が著しており、一読の価値がある。