97歳の「知られざる画家」が人気上昇。オークションでは予想の5倍で落札、再評価ぶりを裏付け
アレクサンドルは2003年からドッドを扱っているが、2年ごとに開催する個展には常に大きな反響があるという。とはいえ、ドッドがかつて所属していたフィッシュバッハ・ギャラリーでは、アレックス・カッツやジェーン・フライリヒャーといったアーティストたちの影に隠れがちだった。ちなみに、ドッドも、カッツやフライリヒャーも、このギャラリーで最初に脚光を浴びている。 アレクサンドルによれば、その一因はドッド自身が市場にほとんど関心がないことだという。 「ドッドの作品は全てが唯一無二のものです。彼女はシリーズを作らず、ある作品が高く売れたからといって、それが別の作品に影響を与えるようなことはありません。本当に、ただ自分のために絵を描いているのです。彼女は、これまで過小評価され、見過ごされてきた女性作家を見直そうという機運に乗っていると言えるでしょう。つまり、ようやく正当な評価を得られるようになったのです。自分のために絵を描くという姿勢には反するかもしれませんが」 ドッドの再評価に寄与した出来事の1つは、昨年春にコネチカット州グリニッジのブルース美術館で行われたた個展、「Lois Dodd: Natural Order(ロイス・ドッド:自然の秩序)」だろう。同展の開催直前には、ニューヨーク・タイムズ紙のアート&デザイン欄でも大きく取り上げられた。 ドッドについて、クリスティーズの戦後・現代アートセールの責任者、ジュリアン・エルリッヒはUS版ARTnewsにこう期待を述べている。 「ドッドはここ数年、価格が上昇しているアーティストの1人ですし、これからも好成績を収めるはずです。それに、オークションで目を見張るような価格が付くたびに、さらに素晴らしい作品が市場に出てきますので今後が楽しみです」 アレクサンドルでドッドの初個展が開かれた2003年、展覧会のカタログに寄せたエッセイで美術評論家・詩人のジョン・ヤウはこう書いていた。 「明白なことを言うのは決して無礼ではありません。つまり、75歳の画家、ロイス・ドッドは、一度も正当な評価を受けていないのです」 どうやら、この文章にはアップデートが必要なようだ。(翻訳:石井佳子)
ARTnews JAPAN