モー娘から新しい学校のリーダーズまで…親近感と「応援しなくちゃ」心理が生んだアイドル新時代
AKB48グループのシングルCDに封入される「イベント参加券」。これを使用することでファン・購入者はメンバーと直接握手や会話などの交流ができる「握手会」などに参加でき、お目当てのメンバーと握手し、その購入枚数分の規定の時間、二人だけのトークができる。もちろん握手会などのキャンペーンは昭和の時代から存在したが、買ったぶんだけ一緒にいられる、時間を共有できるというシステムにファン心理は大きくくすぐられ、それはCDのセールス増加に直結した。 さらに、AKB48グループでは“選抜”というシステムによって、センターやフロントに立つメンバーが毎回入れ替えられるというシビアな競争も盛り込まれ、同じグループ内でのメンバーをライバル的存在として可視化させた。それがそれぞれのメンバーのファンの熱狂度を生み出し、 “○○推し“という言葉の浸透とともに「応援しなくちゃ」という心理を大幅に増幅させた。 その極め付きが、AKBグループが導入した「選抜総選挙」だ。ファンクラブへの加入、対象時期に発売されたシングルCDを購入することで得られる「投票券」。その得票数による順位によって、次の曲のセンターが決まるばかりでなく、グループ全体でのメンバーの順位も決められる。そしてそれはすべてファンに委ねられる形だ。地上波のゴールデンタイムでその開票は生中継されるなど、社会現象となった。 ライブやイベントなどと並行して行われる特典会での「チェキ」撮影も、「親近感」を形として残せるものとして爆発的に浸透。小規模のライブハウスを拠点として活動するインディー系のアイドルも続々登場、“地下アイドル”“ライブアイドル”といった名称とともにシーンは大きく拡大、冬の時代から一転、「アイドル戦国時代」と称される時代へと突入する。 ◆ブームから日常へ アイドル戦国時代突入 新たな勢いを取り戻したアイドル界には次々と人気者が誕生した。 「週末ヒロイン」を名乗り、やがてはテレビ番組などでのタレント性の浸透と、大規模会場でのライブ活動を両立させることに成功した、ももいろクローバーZ。「アイドルとメタルの融合」をテーマに、キュートなルックスの女性アイドルが本格的なヘビーメタルのサウンドをパフォーマンスするBABYMETALは、アイドルにさほど興味をもたなかった国内ロックファンのみならず、メタル人気の高い欧米でも注目を集め、坂本九以来の全米チャートTOP40入りという快挙も達成した。 パンクロックのサウンドをアイドルソングに落とし込み、ライブではロックバンドのライブさながらの熱狂を生んできたBiSとBiSHの存在も、ライブアイドルシーンに大きな影響を与えた。BABYMETALやBiSHのように、アイドルソングはさまざまな音楽ジャンルと融合、楽曲の完成度に注目が集まる一部のアイドルは“楽曲派”という言葉でカテゴライズされることもある。