宮里藍さん、故郷沖縄で待望の女子ジュニア大会開催 中高生ゴルファーに成果と笑顔
年齢差に関係なく「思いは一緒」
表彰式の際、選手たちの成果を隣で聞いた宮里さんは「伝えたいことがいっぱいある。でも全部受け取ってもらわなくてもよくて、何かしらその選手が必要にしていることがある。その選手がそれぞれ（心に）刺さったことが生きてくれたらいい。クラブを抜くしぐさとか、ちょっとしたことが差になる。ヘルプになったのなら、この上ない喜び」と満足そう。宮里さんが憧れという吉崎選手とは、笑顔でツーショット写真に納まった。表彰式の後も地元沖縄の選手らに囲まれ、「キャディーはどうやって選んだいいのか」などの質問攻めに。時間の許す限り、自身の経験を踏まえて回答した。最後は選手による「自撮り集合写真」に納まり、別れを惜しんだ。 参加選手の親御さんは宮里さんをよく知る世代だ。世界ランキング1位に君臨し、米ツアー9勝、日本ツアー15勝をマークした「レジェンド」を仰ぎ見るが、選手たちは宮里さんの現役時代を知らない。本人は世代の違いがある対象への指導でも、それほど気にならないらしい。「あんまり自分のことではなく、ゴルファーとして会話は成り立つ。年齢とか地位は関係なく、どうゴルフを上達させていくか。思いは一緒なので成り立っている大会なのかと思う」。その言葉通り、ジュニアゴルファーとの間に壁はなく、好ましい緊張感の中で大会を運営。選手が宮里さんを敬う姿勢は終始見られ、宮里さんも「親目線で」彼女らを見守った。 ◆パワーゲームについていける 日本女子ゴルフ界の隆盛は近年、目を見張るものがある。今季、海外メジャーの全米女子オープン選手権で笹生優花が3年ぶり2度目の優勝を遂げ、エビアン選手権では古江彩佳が日本勢初優勝。五つの海外メジャーのうち、二つを日本勢が制した。来たる12月の米女子ツアー最終予選会には山下美夢有、竹田麗央、岩井明愛、千怜の双子姉妹も挑戦すると表明。来季は米女子ツアーに参戦する日本勢が10人を超えるかもしれない。 宮里さんは「世界的に今、パワーゲームになっている。ゴルフが。そこに（日本選手が）ついていけているのが一番大きいかなと思う。飛距離で負けていないところと、シンプルにプレーする傾向があると思う。パッティングがすごくうまいな、と思う選手も多い。その辺の対応力は、今の選手の方がたけているのではと思う」と分析。圧倒的な飛距離などを武器に国内女王へ突き進んでいる竹田に関しては、こう話す。「一緒に回ってみないとなかなかそのすごさを体感できないけど、本当に傍から見てるだけ。本人の感覚とは違うことがあるかもしれないが、飛んで曲がらないのは一番の武器かなと竹田選手については思う」 ◆一回一回、主催大会に全力 宮里さんの現役時代、ゴルフ担当として米本土での米ツアーや海外メジャー、米ツアーのアジアシリーズなどで多くの取材機会があった。小柄な体で飛距離は海外勢に劣るが、その分、正確なショット力とグリーン周りのショートゲーム、パッティングの集中力、巧みさで対抗する姿が印象的だった。流ちょうな英語でコミュニケーション力にもたけ、日本選手と思えないほど、米ツアーに存在自体がとけ込んでいた。何より諸外国の選手たちに愛され、日本選手にも慕われていた。 今後、宮里さんは公私で忙しい。12月で3歳になる娘さんがいて、当面は家族のサポートが必要な時期が続く。「ずーっと手探りではないかと思う。今までは自分のことだけ、自分に責任を持って周りにサポートしてもらった。育児に関しては、自分ではコントロールできないものを育てている。自分の状況と並行していきながら、この大会に向けてはいいものをずーっと作り続けていければいいなと思っている。何回続けてとか、回数の目標とかはない。一回一回、この大会に全力を尽くす、との感じで毎年やっている。また来年開催できるのであれば、その時に何をブラッシュアップしていくか見分けていきたいと思う」 ◆いまだ特別の存在感 ママになって子供を見る目が変わったのかを問うと、「成長の段階が人それぞれ、VISION54にもあるが、それを見守る立場というものがどれだけ大変か、というのは少しだが実感はある」。子育てが楽しいかと聞くと「大変です。大変ですけど、楽しみながらやる余裕を持てるように頑張ります」と笑顔を返してくれた。 表彰式の挨拶で、宮里さんはジュニア選手たちにこう語りかけた。「主催者としては、引退して今年で7年目。毎年、この大会を通じて、本当に可能性のあるたくさんの選手に会えてすごくうれしい。今後もどこかでプロの試合もそうですし、皆さんと会える日を楽しみにしています」。この大会からどんなスター選手が羽ばたいていくのか。レギュラーツアーでは毎年6月に「宮里藍サントリーレディースオープン」が開催されている。女子ゴルフ界で「宮里藍」は、いまだ特別の存在感がある。
