「やる気がないなら身売りしてくれ」 西武、中日を買収できる“救世主”はどの企業か
アクの強い経営者
今年からウエスタンリーグ、イースタンリーグに加入したくふうハヤテベンチャーズ静岡と、オイシックス新潟アルビレックスも同様。前者の親会社のハヤテグループは資産運用ファンドが本業、後者のスポンサーのオイシックスは食材宅配を手がけている。ベンチャー企業にとっては、プロ野球は広告媒体としてまだまだ魅力的だ。 また、1970年前後にヤクルト・ロッテ・日本ハムと食品業界から立て続けに3社が球界に参入した。この3社とも、オーナー系企業かつ食品業界では新興という共通点がある。 ヤクルトは創業者ではないが松園尚巳・直巳の両氏が戦後にヤクルトレディによる販売システムを立ち上げるなどして全国展開に成功、球団でも2人が長らくオーナーを務めた。 ロッテは重光武雄氏がチューインガム販売をきっかけに1948年に創業し、ガムやチョコレートを主力商品にして急成長した。ロッテグループ、球団ともに現在まで重光家が重役に就いているし、同業の江崎グリコや明治製菓が大正時代の創業なのに比べればお菓子メーカーとしては後発のグループでもある。 大社義規氏が1942年に徳島で創業した日本ハムグループでは、野球好きの同氏が1973 年にファイターズを買収してオーナーに。創業は徳島で本社は大阪だが、球団の本拠地は東京から北海道へと移り変わった。 いずれも、企業の成長期に舵取りをした個性の強いトップが、球団保有に乗り出し、長くオーナーを務めた。アクの強い経営者でなければ、やはりプロ野球球団を保有し続けることは難しい。同じ通信業界でも、国営企業由来のKDDIやNTTドコモではなく、ソフトバンクや楽天が球界に参入できた所以でもある。 こういった事情を考慮すると、俗にJTCとも称される古い体質の大手企業や業界、具体的にはインフラ系や重厚長大な製造業、あるいは財閥系の老舗がリスクの大きい球団経営に乗り出す必然性はない。例えば中日が低迷するとファンから愚痴めいて「身売り先候補」になるトヨタ自動車もその典型。すでに絶大な知名度を持ち、サッカークラブ(名古屋グランパス)も傘下に持っている同社が、これ以上“道楽息子”を増やしても足手まといになるだけだ。日本ハムとファイターズの関係のように地元企業である必然性はないが、東海地方が製造業の強い土地柄であることも身売りの可能性を低くしていよう。 かつてのオリックスなどがそうであったように、今後球界参入を試みる企業が出るとしたら、耳なじみの薄い新興企業となるだろう。親会社の消極ぶりに忸怩たる思いがあっても、「白馬の騎士」は身近にはいない。だからこそ、今運営を担っている各球団のスタッフにはファンに恥じない球団経営を望みたい。 デイリー新潮編集部
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