トップアスリートとの共同開発が未来のLifeWearを創る パリ五輪に向け、ユニクロ×スウェーデンのトップアスリート協業コレクションを発売
コンパクトながら大きな意義を持つ協業コレクション
「UNIQLO × SWEDEN ATHLETE COLLECTION」は8型とコンパクトなコレクションだが、LifeWearを進化させるうえで大きな意義を持っている。 「私たちがスウェーデンのトップアスリートと協業しているのは、単なる話題づくりのためのコラボレーションではありません。スウェーデン代表選手団向けの公式ウェアやそこから生まれた一般販売向けのコレクションはそれだけで独立して見えがちですが、2019年から続けてきた協業の中で、実はユニクロの本体の商品群の中に素材やデザインなどが落とし込まれていっているんです。テニスのロジャー・フェデラー氏や国枝慎吾氏、錦織圭選手、ゴードン・リード選手、ゴルフのアダム・スコット選手、スノーボード・スケートボードの平野歩夢選手のような、私たちのグローバルブランドアンバサダーとの協業によるウェア開発と同様の意義や狙いがあります」 ユニクロは10年以上前から、普段着だけでなくスポーツ用途にも使えるウェアの開発を強化してきた。最近は「スポーツやアウトドア由来の高機能性で、カラダを動かすあらゆるシーンに快適に、心地よく」をスローガンにした新ライン「スポーツユーティリティウェア(SUW)」を打ち出している。 「柳井正社長も最近よく言っているのですが、私たちのLifeWearというコンセプトとスポーツユーティリティウェアというコンセプトが今のお客様やその生活環境、社会環境を含めてマージ(融合)してきています。そういう意味でも、UNIQLO × SWEDEN ATHLETE COLLECTIONでしか使っていない新しい技術が、数年後の私たちのコアプロダクトに使われていくという、大きなアウトプットが期待できます。まさに、Future of LifeWear、Future of SUWと言えるでしょう」
すでにスウェーデン代表向けのコレクションから生まれたヒット商品もある。2023年に登場した「パフテック」シリーズは、すでにコア商品に位置付けられるほどの成功事例になっている。ダウンのジャケットやベストに形状は似ているが、暖かくて軽い機能性中綿を使用し、生地の織り方で中綿を包む袋を作ることでステッチの針穴が生じず、雨風が侵入しにくく中綿も抜けにくく、今までできなかったデザインが可能になっている。また、「ファンクショナルバックパック」もスウェーデン代表選手団向けに作られたものから日常使いにモディファイされ、リデザインされて商品化されたものだ。 2019年1月に契約を締結してから5年間で確実に技術やノウハウが蓄積し、開発やMD(マーチャンダイジング、商品計画)のスケジュールの中に組み込まれるようになったことも大きな進歩だ。 「やはり、素材やデザインの開発には時間がかかります。選手へのウェア提供をメインでスタートした当初は素材や構造からの新規開発は時間的に難しく、私たちが手配できるものの中で最大限の努力をして作り上げていました。それが今では時間をかけて研究開発ができるようになりましたし、ユニクロ本体の将来の企画や開発スケジュール、さらには平野歩夢選手や錦織圭選手らグローバルブランドアンバサダー向けのウェア開発と横一線で考えて開発できるようになり、とてもポジティブな状態です」 「たとえば、平野選手が昨年から着用している新しいウェアはとても完成度が高くなっています。このウェアをベースにスウェーデン代表選手団向けのアイテムを開発することもできるでしょう。大舞台の場でお披露目できることも大きな意味を持ちますが、それ以上に、中長期的に共同開発を行うことで、コアプロダクトとして展開でき、お客様のもとに届けられるようになる。この循環が生まれることが本当の意味での成果物であり私たちの取り組みの本質だと思っています。研鑽を重ね、より良いものを創り上げ、コアプロダクトに展開する。しかも、数量が増えることによってコストが削減でき、リーズナブルな価格で届けられることができるというのは、中長期的なプロジェクトでないとなしえないこと。非常に有益だと思っています」 <後半へ続く>
松下久美