不登校経験者8割、人気の訳は「ぬるい学校」の真意 立花高校、「学校破壊」で自由度高める意義とは
福祉事業所やフリースクールも設置、当たり前を変えていく
生徒の自主性や自立を大切にする同校は、卒業生の将来を見据えた取り組みも行っている。 「進路としては大学や専門学校への進学あるいは就職があり進路指導自体も他校となんら変わりませんが、知的障害や発達障害のある生徒さんの中には就労支援施設を選ぶ子も多いです。卒業して社会に出るまでもう少し準備を要する子のための支援も行っています」 具体的には、パイルアップたちばなという株式会社を設立して子会社化し、就労継続支援A型事業所として校内の学食「ママズカフェ」を運営している。卒業生は同社と雇用契約を結び、調理、接客、校舎内外の清掃などを担う。このように卒業後までシームレスに就労支援を行う私立高は非常に珍しい。 「学校法人が福祉事業所を併設するという先例がなく立ち上げに苦労しましたが、7年前に認可が取れました。A型事業所は雇用主と雇用契約を結ぶことで最低賃金が保障されているのですが、とくに本校は家計を支える立場の生徒さんも極めて多く、一定のお給料をもらいながら就労支援を受けられるというメリットがあります。定員は10名で在籍期間は2年をメドにしていますが、申請すれば延長も認められます。これまで4~5名がここから社会に出ていきました」 このように1人ひとりを大切にする同校の人気は高まっているというが、選抜はどのように行っているのだろうか。 「当初は他校さんでも十分やっていける力を有する子たちより、本校でしかなかなか高校生活を送ることができないであろう子たちから合格を出そうとしていました。しかし、それを先読みして『学校に毎日行ったら立花に受からんよ』『通知表は1で揃えなさい』と子どもに言う保護者が出てきたのです。これでは中学校の先生の教育の足を引っ張ることになりますし、そもそも『わざと学校に行かない、点数を取らない』というテクニックを覚える必要なんてありませんよね。こうした状況を受け、学力と面接を同列で評価する選抜に変えました」 しかし、入学希望者は年々増え続けており、毎年数十名の不合格者を出さなければいけない状況が続く。そうした中、同校は2022年に学校の敷地内にフリースクールを作った。 「県の決まりで定員は増やせません。一方で、高校生対象のフリースクールがほとんどないという現状もありました。そこで、不登校経験者の子たちの居場所をつくることにしたのです。現在は2名が在籍しています。勉強したり、ボードゲームをしたり、学校の外へ行ってみたり、過ごし方は自由。指導は本校の教員が行い、本人が希望すれば本校の授業を受けることもできるようにしています」 さまざまな角度から独自の教育を行ってきた同校。今後取り組みたいことについて、齋藤氏は「学校破壊」を挙げる。 「当たり前だと思い込んでいたことを大胆に変えていきたいということです。これまでも固定担任を廃止し、3人1組のチーム担任制を取り入れるなど、当たり前を変えてきました。これにより生徒さんからは『担任の当たり外れがなくなった』という声が聞かれるほか、先生方はフレックス勤務が可能となって年休も取りやすくなったと言います。本校はずっと生徒さんも先生方も『生徒らしさ・先生らしさ』にとらわれず、服装も自由、化粧もピアスもOK。でも、学校として崩壊しているわけではありません。当たり前を壊し、自由度を高める意義を今後も発信していけたらと思っています」 不登校児童生徒数が毎年のように過去最高を更新し、学校のあり方から見直す必要が出てきている中、今後も同校の取り組みには注目が集まりそうだ。 (文:吉田渓、写真とイラスト:立花高等学校提供)
東洋経済education × ICT編集部