150キロを出した岡山商科大・近藤にドラフト1位指名の声
全日本大学野球選手権の1回戦7試合が5日、神宮球場、東京ドームで行われ、今秋のドラフト候補である岡山商科大の近藤弘樹、九州産業大の草場亮太、日本文理大のケムナ・ブラッド・誠の3投手が先発した。近藤、草場は、最速150キロをマークして1回戦を突破したが、ケムナは制球に苦しみ4四球で3回持たず降板。明暗を分けてしまったが、ネット裏に勢ぞろいした日米のスカウト陣の評価が高かったのは、全国区で初めてそのベールを脱いだ近藤だった。 電光掲示板は150キロを表示した。 3回二死から牧野を迎えた4球目。そのボールはファウルになったが、威力はあった。 2点のリードで迎えた9回にも先頭の駒瀬大武にレフトへ落とされ守備の乱れも手伝い二塁に進まれたが、ここから最後の力を振り絞ってギアチェンジ。一死をとって代打の美濃晃成にカウント0-2から投じたストレートはボールになったがスカウトのスピードガンでは150キロを表示した。141球目だった。 速い球を見せておいてチェンジアップで三振。最後のバッターには149キロのストレートをズバッ。見逃しの三振でゲームセット。冷静な男が19年ぶりとなる神宮勝利にガッツポーズをしてクルっと体を翻した。 「最後? 正直狙っていきました。でも疲れてしんどかったのでギアチェンジがうまくいかなかった。球速は気にしていないし、大事なのは勝つこと。勝ててよかったです」 近藤は146球を投げて8安打8奪三振2失点の完投勝利。 強豪・近大は、対近藤対策を万全に準備してきた。大阪上宮高の監督時代にセンバツ優勝、東大阪大柏原高も甲子園出場させた高校野球界の名将、田中秀昌監督が現在、近大を率いているが、「近藤君のスピードボールに対処するために同じような身長の高いピッチャーに1.5mから2m前から投げさせて練習してきた。高めに手を出さない指示もした」という。さらにバッターボックスの後ろに立ち、カウントを追い込まれると、振り遅れないようにノーステップ打法に切り替えさせるなどして8安打を浴びせたが、8回の牧野慎也のソロアーチを含む2点を奪うのが精一杯だった。 「本来なら、こちらが近藤君の立ち上がりを攻略せねばならないのに逆の展開になった。考えていた以上に近藤君は変化球が多く、打者に戸惑いがあったのかもしれない」と田中監督。 だが、近藤に言わせると「初めてのマウンドだったので足場を作るのも難しかった。緊張もした。調子がよくなくて、ストレートにバラつきがあったので、変化球が多くなった。ストレートを張られて裏をかく場合もあるが、きょうはそうでなかった」そうである。 味方打線に先制点を含む4得点と援護をもらい、6回の無死一、二塁のピンチでもセンターへ抜ける打球をセカンドの高橋昌寛がダイビングキャッチ。バックの美技にも救われた。 38歳の赤木貫人監督は、「8回、9回と代えることも考えたが、本人が大丈夫と。100点をあげていい」と、頼れるエースに及第点を与えた。 2回戦は7日の和歌山戦。特別コーチとして近藤にアドバイスを送っている元阪神チーフスコアラーの三宅博氏は「もう一人、蔵本治孝という好投手がいるので、赤木監督がどういう起用をするのかわからないが、近藤は少々肩に張りがある方が力が抜けて、今日より数段いいボールがいく。まあ楽しみに」と言う。