150キロを出した岡山商科大・近藤にドラフト1位指名の声
神宮球場での第3試合、九産大vs日本文理大戦の“九州対決”では、九産大の草場が150キロを出した。 5点のリードをもらった3回一死二塁から北野秋宏に対しての4球目。アウトコースへ外れたが、そのストレートは150キロと表示された。チームは12-4の7回コールドゲームで日大文理を下したが、草場は6回を投げて7安打5奪三振4失点だった。 試合後、草場は「浮き足立ったが、抑えるところでは抑えられた。完投する気持ちだったけれど」と、1回戦を突破しても複雑な表情。ピッチングでは、「力む癖があるのでやる気がないように見えるように投げる」ことを心がけている。テイクバックが小さく、バッターから体の陰に隠れるような独特の腕の使い方をするが、脱力を意識して、ボールのキレに重点を置いている。それでも、大久保哲也監督からは、150キロを出さないと怒られるそうで「監督に怒られるので、球速は意識して狙いにいきました」という。 まだうまく下半身が使えないため、ボールがバラつくが、力感を感じさせず150キロをマークするのだから、そのポテンシャルに疑いはない。その脱力投法の手本として、草場は、日ハムにドラフト3位で入団した昨年のチームのエース、高良一輝の名前を挙げた。 一方、ハワイ生まれのハーフで大型右腕としてスカウトが注目していたケムナは、「制球が安定せずにチームに迷惑をかけた。申し訳ない、まだ気持ちの整理がつかない」と、試合後にうなだれた。日本文理は、細かい継投がチームカラーだが、3回に連続四球で無死一、二塁とされ、バント処理の送球がそれて満塁となり、岩城俊也に右中間に走者一掃の二塁打を打たれると、降板を告げられた。 この3投手のネット裏スカウトの評価を聞くと近藤株が急上昇していた。 阪神の佐野スカウト部長も、「近藤にはボールに力があるね」と絶賛。 アストロズの大慈彌スカウトも「3人の中で評価したいのは近藤。フォームをこうすればもっと良くなるのになあ、という点もあるが、ストレートは92から94マイル(150キロ)は出ていて、変化球も含めてまとまりもあるのだから、ブルペンとして面白いのかもしれない」と評価していた。 セ・リーグのスカウトは、「ストレートばかりで押すのかなと思ったが、変化球もうまく使える。伸び幅があるピッチャーだと思った。今日、投げた3人(近藤、ケムナ、草場)の中で言えば、近藤がダントツだろう。チーム事情によっては1位指名もあるかもしれない」と言う。 また「ケムナはドラフトの下位あるいは育成ならというレベル。草場も、下半身が使えず、昨年に比べて投げっぷりが悪くなった。上位指名は難しいだろう。それに対して近藤は、今年は即戦力のピッチャーの人数が限られているので、1位に押し出されるかもしれない」というパ・リーグの編成の声もあった。 近藤はストレートに力があるだけでなく、ストライクを先行できて変化球の制球力も及第点。そして146球を投げても、びくともしないスタミナ力。太ももがはちきれそうなくらいごつい下半身もプロ級である。 近大が機動力でつけこもうとしたように、まだクイックができないなどプロでの即戦力として考えると課題は多いが、ノビシロも考慮すると、大型右腕の近藤に1位の声がかかるのも不思議ではない。 すでにソフトバンク、ヤクルトの2球団は徹底マークしている。 岡山商大初のプロ野球選手が誕生する日は現実のものとなりそうだ。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)