安易な「ツライチ化」で大事故も発生! 本当に正しい「ホイールスペーサー」の使い方とは
ホイールのスペーサーってそもそもなに?
ホイールをボディ外側に出すスペーサーやワイドトレッドスペーサー。見た目にホイールのツラ具合を揃えたり、ハンドリングを変えるのに有効だが、正しい使い方で使ってもらいたい。 【画像】ホイールスペーサーと強度試験の合格証などが写った写真などの画像を見る まず、ホイールスペーサーとはハブ面とホイールの間に入れるもの。ワイドトレッドスペーサはそのホイールスペーサーからスタッドボルトが生えているもの。 前者のホイールスペーサーの利点は細かく調整できることで、3mm、5mm、10mmのようにさまざまなサイズが用意されていて、ホイールとフェンダーの具合を調整できる。 一方でワイドトレッドスペーサーはまずそれ自体をハブに固定する。そして、そのワイドトレッドスペーサー本体から生えているスタッドボルトにホイールを固定する仕組みだ。ちなみに、ワイドトレッドスペーサーはある程度厚みがないと、その本体にスタッドボルトが固定されているので強度が保てない。一般的に15mm以上といわれる。厚みは15mm、20mm、25mmあたりが主流だ。 ホイールスペーサーを使うときの注意点は、まずスタッドボルトの長さが足りているかということ。純正のスタッドボルトに十分な長さがないとスペーサーを入れたときにホイールを固定するナットの掛かりが浅くなってしまう。少なくともナットが固定まで4~5回転はしないと危険。それ以下であれば、スペーサーを薄くするか、ロングスタッドボルトに交換する必要がある。 ワイドトレッドスペーサーの場合は、厚みのあるものを入れてもその心配はない。だが、逆に心配なのが純正スタッドボルトの長さだ。純正スタッドボルトが25mmだとして、ワイドトレッドスペーサーが15mmだと、ワイドトレッドスペーサーのホイール取付面から10mmほど純正スタッドボルトが飛び出してしまうのだ。
正しい使い方をしないと大事故に!
そういったことも想定して、ホイールの内側取付面、取付穴以外の部分が肉抜きしてあるホイールも存在する。とくに、スポーツ走行向けのホイールではそういった使用も考えていたり、軽量化のために肉抜きがしてあって飛び出したスタッドボルトを避けることができる。しかし、肉抜きがないホイールだとスタッドボルトにホイール裏面が当たった状態で取り付けることになってしまう。こうなるとハブ面とホイールが面接触しないため非常に危険。気にしない人もたまにいるが、危険すぎるのでこういった取り付けは厳禁だ。 ちなみにワイドトレッドスペーサーは、ハブの取付面からホイールが遠くなるので、スタッドボルトに掛かる力は確実に増える。なので、できればハブセンターでのホイール支持をするようにしたい。 純正ホイールは当然のようにそうだが、ホイールの中心の円と、ハブ側の円がガッチリと接触することで、ホイールのセンターも出るし、そこで荷重を受けもつ意味もある。さらにスタッドボルトでホイールとハブを引っ張り合って固定し、スタッドボルトでも荷重を受けもつ構造となる。 これがアフターパーツのホイールだと、多くのクルマに取り付けられるようにハブセンターが大きく作ってある。そこでそのまま取り付けるとハブセンター支持がなくなってしまう。本来はそこに車種に合わせたハブリングを入れて、ハブセンターで支持をしてホイールを取り付けるようにしたい。これはワイドトレッドスペーサーに対応したものが売られているのでオススメだ。 また当然だが、ワイドトレッドスペーサー装着の場合は、ホイールを増し締めする際は、一度ホイールを外してワイドトレッドスペーサーの取付ボルトを締め、それからホイールを取り付けて締めなければならない。 スペーサーもワイドトレッドスペーサーも、それ自体を使っているから車検NGとはならない。タイヤとホイールの飛び出しが基準内に収まっていれば、問題はないが、ディーラーや民間車検場などでは、検査官の判断でNGが出る場合もある。そのあたりは「絶対NG」という結果はないので、現場によって異なるというのが実情だ。 それからスペーサーもワイドトレッドスペーサーもサーキット走行となると微妙。やはりどちらもスタッドボルトに対する負荷は増すので使わないことが望ましい。 最後に、こういったアフターパーツによる脱輪事故などがあとを絶たない。とはいえ、パーツ自体が危険なのではなく(粗悪品もなかにはあるが)、過度な厚みのものを使ったり、しっかりとトルク管理した締付け確認を頻繁にしていないなど、ユーザー側の安全に対する意識の欠落がほとんど。 スペーサーなしのホイールでも、きちんと定期的にトルク管理して締めていなければ脱輪につながることもある。外れたタイヤとホイールは凶器でしかない。きちんとした取り付け管理を行っていただきたい。
加茂 新