追悼 西田敏行さん 福島出身で虎党。強くてやさしい、心に鬼を飼っている人。「存在感」と「何役でもできる」を成立させる稀有な役者
俳優の西田敏行さんが10月17日に虚血性心疾患のため76歳で逝去されました。取材などで親交のあった中西正男さんが、その人となりを振り返ります(文◎中西正男) * * * * * * * ◆人間臭いチームに惚れて虎党に 俳優の西田敏行さんが10月17日に虚血性心疾患のため76歳で逝去しました。 これまで幾度となく取材をさせてもらってきましたが、福島県出身で熱烈な阪神ファン。ここに西田さんの“軸”が集約されていると強く感じてきました。 デイリースポーツの記者時代から、取材の度に阪神関連の質問をさせてもらってきました。事細かにその時の阪神の戦い方を分析して自分の思いを強く話す姿に、本当に好きなんだという思いがストレートに伝わってきました。 人間臭いチームに惚れて子どもの頃から虎党になったと聞きますが、土地柄、周りに阪神ファンはいなかった。「石を投げられる」ような状況でも、自分が好きと思ったものは貫く。誰が何と言おうが変えない。その思いの強さが阪神への思いに表れていました。 芸能取材をして26年目になりますが、その世界で突き抜けて売れる。そんな人には共通点があると感じてきました。
◆圧倒的な芯の強さと優しさ 絶対にブレない。折れない。そして、誰が何と言おうが変えない。そういった鋼の部分が胸の内にある。 この鋼がある人のことを僕は“心に鬼を飼っている人”と表現してきましたが、ビートたけしさんも、明石家さんまさんも、有吉弘行さんも、ゆりやんレトリィバァさんも鬼を飼っている。強くて怖い鬼がいるからこそ、とことんアホにもなれるし、人が歩いていない道も歩ける。そして、圧倒的な芯の強さがあるからこそ、とことん人にやさしくできる。 2001年から19年までABCテレビの名物番組『探偵!ナイトスクープ』の局長も務めた西田さんですが、そこで出会った芸人さんにも真っすぐなやさしさを見せていました。 19年、同番組の探偵を務めていた「スリムクラブ」真栄田さんが吉本興業の“闇営業”問題で謹慎になりました。取材の場で真栄田さんについて尋ねられた西田さんは「頼まれたら断れない。それも芸人。来てほしいと言われたら行く」と発言。「何を擁護しているんだ」という世論も多分に想像される中でも、自分が思ったことは貫く。うわべのやさしさではなく、強さからのやさしさ。それが垣間見えた瞬間だったと感じました。そして、真栄田さんはその言葉に心の底から感謝していました。