日本のアイデンティティー、民主主義のインフラ 「国立公文書館」の役割
古書や古文書については約48万冊ある。江戸幕府の将軍家や寺社、公家らが所蔵していた古書や古文書も含まれる。古いものでは、親から娘たちへの家や土地の相続の内容を記す909(延喜9)年の「民安占子家地処分状」など、いまから約1100年前に書かれた古文書もある。戊辰戦争で官軍が掲げた錦旗や軍旗の模写図「戊辰所用錦旗及軍旗真図」や江戸時代の地図「元禄国絵図」など、国の重要文化財に指定されている資料も所蔵する。ほかには佐藤栄作元首相が書いた「佐藤榮作日記」など、個人が寄贈した資料も保管している。 国立公文書館では、これらの資料を永久保存するほか、閲覧可能な資料は閲覧室やインターネットを通じて公開している。資料の調査・研究や、公文書管理に関する研修なども行っている。紙の資料のデジタル化にも取り組んでいる。現時点で、所蔵文書のデジタル化率は17%。年間3万冊ずつ増えていくため容易ではないが、最終的に100%のデジタル化を目指す。
国の政策を後の時代に検証できるように
こうした公文書や古書・古文書などを保管する意義について、国立公文書館では「公文書は、国の政策や歩んできた歴史を後の時代の人も検証できるようにするための資料であり、民主主義を支える基本的なインフラ。日本人の歴史や伝統、文化や営みを知ることができるので、国民のアイデンティティ意識を高めることにもつながる」と強調する。 1873(明治6)年に板垣退助ら8人が政府に提出した「民撰議院設立建白書」や、1876(同9年)年に元老院に発せられた「国憲起草の詔」からは、明治時代の近代国家への歩みが伝わってくる。1946(昭和21)年に作成された憲法改正草案会議の資料からは、日本国憲法の条文が練り上げられていく過程を知ることができる。ほかにも1971(昭和46)年作成の「沖縄返還協定関連文書」など、戦後史の重要な出来事に関する公文書も残されている。同館は「これらを適切に保管し、国民の皆さまに利用してもらうことは国の責務」という。