ロッテ岡田、入団以来本塁打ゼロの珍記録 まもなく達成
育成ドラフト6位から這い上がってきた苦労人。だから1軍への執着は誰より強い。「プロの選手は、みんな、そう思っているのでしょうが、僕は、それ以上に負けたくないし、絶対に2軍に落ちたくない。その気持ちは、他のどの選手よりも強いんだと思います」。 日大時代に怪我をして途中退学。それでも野球はあきらめず、足利ガスに勤めながら、企業のバックアップなど何もないクラブチームの全足利クラブでプレーした。そのチームは、この夏、36年ぶりに都市対抗出場を果たしているが、岡田の時代には、全日本クラブ野球選手権優勝が精一杯だった。 「夢の世界。都市対抗は、弱小高校が甲子園に出るくらい狭き門なんです。よく出ましたよ。まだチームに激励に行けていませんが、バットか何かを贈りたいと思っています。よく『クラブチーム時代は大変だったでしょう?』と聞かれるんですが、僕は好きでやっていることなので苦労はなかったんです。市営球場も優先的にナイターで使わせてもらったし、妻や周囲のサポートがあって野球をやらせてもらっていました。プロで恩返しをせなあかんとは、ずっと思っていました。今もそうです。奥さんは子供3人を抱えて昼間は市役所へ仕事に行って、僕は単身赴任で好きな野球をやらせてもらっています。単身生活は不便なことだらけですが、これは我慢しなきゃいけないこと。サラリーマンの方でも同じ境遇の方はたくさんいますよ」。 現在、奥さんと3人の愛娘は、栃木で暮らしていて岡田は千葉で単身赴任。練習のない月曜日にだけ、家族の顔を見に栃木へ帰る。そして奥さんは、岡田のプロ入り後も、変わらず市役所勤務を続けている。「妻は、仕事が好きっていうこともあるんでしょうが、僕がいつプロを首になってもと、考えてくれているんでしょうね。なおさらやらなきゃいけない責任があります」。野球人・岡田の奥底にあるモチベーションである。 今シーズンは開幕からスタメンを外れた。萩野は故障で離脱したが、角中、清田、サブロー、伊志嶺と競争が激しく、代走から守備固めという起用法も少なくない。岡田は、「なんとしても、スタメンを奪うんだという意識はないんです。監督がオーダーを決めること。もちろん、スタメンの方がいいですが、そうでもなくとも、接戦になれば、1点を守り抜く守備や、ここで1点を欲しいという代走で間違いなく使われるし、その時に自分の仕事をしっかりと果たすことが大事です。『スタメンじゃないから今日はいいや』ではなく、自分が信頼されている部分を大切にして『どういう展開になって、どこで出るんだ』ということを試合中にイメージしています。チームにプラスになることは何かを考え、自分の仕事をまっとうすることなんです」という考え方を持っている。 チームは今季最多の借金「8」。Bクラスでもがいている。「気持ちだと思います、考え方ひとつで野球は変わります。こういうときだからこそ、僕がハッスルして元気いっぱいのプレーをしなければならない。ロッテは、束になってかかっていかないと勝てないチームです。若いチームですから、みんなで声をかけあって、この我慢の時期を乗り越えていかなくては」。29歳。昨季のチームキャプテンは、CSチャンスをあきらめていない。 取材の最後に、“その日”のことが話題になった。いつホームランが生まれるかである。 「そのときは、僕らしくランニングホームランかもしれませんね」。 さらに「今日は、フリー打撃でオーバーフェンスを狙ってみようかな」と本気の顔をして言うので、あわてて止めた。「そんなことしてバッティングでも狂ったらどうするんですか。記録の意味がないでしょう」と諭すと、岡田は笑ってうなずいた。 (文責・本郷陽一/論スポ、アスリートジャーナル)