原田裕規、初の大規模個展「ホーム・ポート」が開催へ
1989年に開館した広島市現代美術館と同い年で、広島出身の作家・原田裕規 。その美術館初の大規模個展「原田裕規:ホーム・ポート」が開催される。会期は11月30日~2025年2月9日。 原田は1989年山口県生まれ、広島県育ち。2012年に「ラッセン展」や「心霊写真展」の企画で鮮烈なデビューを飾り、16年に東京藝術大学大学院美術研究科修士課程先端芸術表現専攻修了。2019年以降は断続的にハワイに滞在し、ピジン英語に代表されるトランスナショナルな文化的モチーフに着目した作品を発表してきた。書籍として、単著『評伝クリスチャン・ラッセン』(中央公論新社、2023)、『とるにたらない美術』(ケンエレブックス、2023)、編著『ラッセンとは何だったのか?』(フィルムアート社、2013、増補改訂版=2024)などでも知られており、 23年には「TERRADA ART AWARD 2023」でファイナリストに選出され、審査員賞(神谷幸江賞)を受賞 するなど、いまもっとも勢いのあるアーティストのひとりだ。 本展タイトルと同名の作品《ホーム・ポート》は、日系人も多く移り住んだ町であり、2023年夏に大火に襲われたマウイ島ラハイナが描かれたラッセンの作品がもとになっているという。広島出身であり、ラハイナへの滞在歴もある原田は、「母港」を意味するこの作品の題名を展覧会のタイトルに採用した。それゆえに、本展は原田にとっての里帰り展ともいえるものだ。 本展では、原田が現時点の集大成とする新展開の平面作品に加えて、24時間にわたり捨てられた写真を見続ける《One Million Seeings》、33 時間かけて地球上の全動物の名前を朗読する《Waiting for》、ハワイで使用される日本語混じりのピジン英語で語る《シャドーイング》など、自らの身体性に向き合い、制作された映像作品が一堂に介する。 また、2023年夏に大火に襲われたハワイ・ラハイナの過去と未来が描かれた《ホーム・ポート》、日本画家・東山魁夷の代表作を参照しつつ山口県岩国市の山々が描かれた《残照》、黒川紀章設計の同館建築がモチーフになった《光庭》などを含む、最新のデジタル技術を用いて制作された新シリーズ「ドリームスケープ」が一挙公開。10 代の大半を過ごした「広島時代」の初期絵画なども見ることができる。 これまでじつに多様な展開を見せてきた原田。本展はその制作の歩みを総覧できる、貴重な機会となるだろう。