天然記念物・絶滅危惧種のイヌワシ 富山で5組中2組繁殖
富山県内に生息する国の天然記念物、イヌワシのつがい5組のうち、今年は2組でひなが生まれ、巣立ちに成功した。イヌワシ保護協会の小澤俊樹会長(53)=富山市大山上野(大山)=が確認した。イヌワシは絶滅危惧種で、小澤会長によると、県内の生息数が5組となった2022年以降、複数のつがいが繁殖に成功したのは今年が初めて。 イヌワシは国内の山岳地帯に生息する。森林の手入れ不足や単一種の植林、ダム建設などで、餌の小動物が減少したことなどにより、全国的に生息数を減らしている。 小澤会長は、中部地域の山間部に生息するつがいを長年観察している。富山県内では1990年ごろに20~30組を確認したが、2010年には10組に減り、今は5組となっている。 つがいは本来なら毎年繁殖するが、餌の減少の影響でその回数が減っている。最近は数年に1度、繁殖に成功するつがいもいれば、ずっと繁殖ができていないつがいもいるという。
今年は県内の5組のうち、北アルプス周辺にすむ2組が繁殖に成功した。2月に産んだ卵がふ化し、夏に幼鳥が飛ぶ姿が見られた。幼鳥に特徴的な両翼と尾羽の白い羽が確認できた。県内で2組が繁殖に成功したのは、ここ15年では3回目で、21年に6組中2組が繁殖して以来となる。 小澤会長は、今年は繁殖したつがいの生息地で頻繁にヤマドリを見たと言い、餌となるヤマドリの多さが複数のつがいの繁殖につながったとみる。「近年なかったすごいこと。繁殖が成功して幼鳥が飛ぶのを見られるのは喜びだ」と話す。 イヌワシ保護協会は、生息環境の改善などに協力して取り組む県内外の人たちでつくる。黒部市で19日にイヌワシに関する講演会、20日に観察会を行う。講演会は少し空きがあり、聴講希望者は同協会のホームページから申し込む。観察会は既に定員に達している。 ◆イヌワシ◆ 国内では山岳地帯にすむ猛禽(もうきん)類。翼を広げると約2メートルになる。つがいで暮らし、120平方キロメートル以上の範囲を行動圏にする。環境省のレッドリストで「近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの」に分類されている。