バラエティ番組のディレクターから監督へ 異色の経歴をもつ水野格監督に影響を与えた名作の数々とは 映画『あの人が消えた』
“先読み不可能”ミステリー・エンタテインメント映画『あの人が消えた』。この度、2023年に放送されたドラマ「ブラッシュアップライフ」で国内外問わず数々の賞を受賞し、本作の完全オリジナル脚本&監督を担当した水野格が、本作製作にあたってのきっかけやこだわりについて語った。 舞台は「次々と人が消える」と噂されるいわくつきのマンション。配達員の青年・丸子は毎日のようにマンションに出入りするうちに、怪しげな住人の“秘密”を偶然知ってしまい、思いも寄らない大事件へと巻き込まれていく。 主人公・丸子を演じるのは、高橋文哉。丸子の職場の先輩・荒川役には田中圭。ふたりが挑む謎めいたマンションの住人に、北香那、坂井真紀、袴田吉彦、染谷将太。そして警視庁の捜査官を菊地凛子が演じるなど、多彩な俳優陣たちが集結する。 本作の製作前、コロナ禍で宅配を頼む機会が増えた水野は、当時住んでいたマンションで、顔を合わせる配達員の方が毎回同じ人だということに気がついたという。さらに、同じタイミングで、特に交流もなかった隣人が部屋に入っていく姿を初めて目撃して「あ、こういう人が住んでいたんだ。」と思う一方「自分は隣に住んでいる人のことを何も知らない。」と改めて考えたことから「このマンションの住人のことを最も知っているのは配達員なのでは? その人だけが気づける事件が起きたら?」というプロットの糸口へと発想がつながった。
影響を受けている作品や監督は
この着想の根底には、水野が過去に人気番組「月曜から夜ふかし」のディレクターを担当していたことが大きく関わっているそうで「全国のちょっと変わった人々が登場するあの番組に携わるなかで『人は見かけによらない、物事を見た目で判断しちゃいけない。』と強く思うようになりました。そういったことを物語の構造として表現できたら面白いのではないかと考え、『あの人が消えた』はいくつかの段階に分けて印象が変わっていく作りにしてゆきました。」と振り返る。 本作のラストの演出について「“最後に驚きがある”アイデアがなかなか出てこなくて。驚かせたいけど悲しませたくはないという自分のこだわりもあって、相当悩んだ末に“あの”ラストにたどり着きました。そこには自分が「ブラッシュアップライフ」をやったことも影響していると思います。」と回顧する水野は、デヴィッド・フィンチャーらの1990~2000年代の映画が好きなのだそう。 さらに、マーティン・スコセッシ監督の『シャッター アイランド』、リドリー・スコット監督『マッチスティック・メン』、アルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』、スティーヴン・ソダーバーグ監督の『サイド・エフェクト』など、思いがけない方向に話が進んでいく展開の作品を好む傾向があるという。 また、本作への影響について「エドガー・ライト監督やガイ・リッチー監督、マシュー・ボーン監督、ダニー・ボイル監督の初期作など、限られた制約の中でなんとか面白く見せようとしている創意工夫が随所に感じられて、影響を受けています。クリストファー・ノーラン監督の初期作『メメント』『プレステージ』にみられるような、時間軸や構成をいじってあえてちょっと複雑にするような手法は『あの人が消えた』を作るうえで参考にしました。」と語った。異色の経歴を活かして活躍する監督は、名匠たちが生み出した傑作のエッセンスを吸収しつつ、どのような演出や仕掛けで観客を驚かせてくれるのか。 映画『あの人が消えた』は、2024年9月20日(金)より全国公開。
otocoto編集部