考察『光る君へ』6話「全てを越えてあなたがほしい」道長(柄本佑)からまひろ(吉高由里子)への歌よ!漢詩の会から読み解いてみた
俺たちの影は……
道兼(玉置玲央)は右大臣家の汚れ役。それが右大臣家の男達の共通認識になってしまった。弟から父がそう言っていたのだと告げられ傷ついても、それを表に出すことはない道兼。 「俺たちの影はみな同じほうを向いている」。 雅だがなんと恐ろしく、哀しい台詞だろう。道隆・道兼・道長三兄弟の名前についた「道」は一族栄達の道具となる「道」なのか。道具を使う側も使われる側も、同じほうを向き、真っ黒だ。
今週の赤染衛門先生
今週の赤染衛門先生(凰稀かなめ)の授業は、前回第5話で登場した兼家の妾・藤原道綱母(寧子/ 財前直見)の「嘆きつつ…」の和歌。こちらの前回レビューでもご紹介した。 『蜻蛉日記』は、身分低い女が身分高い男の妻となった自慢話だというのは、自分も身分が低いまひろだから気づけた視点なのか。土御門殿サロンの高貴な姫君達にとっては、赤染衛門先生の「嘆きつつ」の歌が素晴らしいゆえに日記も悲嘆の印象が強くなってしまうのだという解説を聞いてもなお、あれが自慢だとはピンとこないだろう。 しかし『蜻蛉日記』作者の藤原道綱母にせよ、まひろ……紫式部にせよ、彼女たちの立場だからこそ書ける世界があるということでもある。 『蜻蛉日記』を貸すというまひろに、倫子の「いらないわ。書物を読むのが一番苦手なの」。 倫子は第3話の赤染衛門先生の授業で、先生に「衛門は古今和歌集を全て諳んじてるから。恋の歌三・小野小町の歌は?」と問うている。書物を読むのが苦手な姫君が、小野小町の歌が『古今和歌集』の恋三にあるとはさらっと出てこないだろう。本当に苦手……というか好きじゃないけど、頭にはしっかり入れているのか、周りのお友達に合わせているのか、まひろのオタクトークをうまいこと躱しただけなのか。今週も倫子は腹の内が計り知れず、魅力的である。 赤染衛門先生、姫君たちの「お勉強にがて♡」アピールを聞くたびに(ええっ?そんな!)という顔をなさるので、お気の毒に思っている。大変だな……。