考察『光る君へ』6話「全てを越えてあなたがほしい」道長(柄本佑)からまひろ(吉高由里子)への歌よ!漢詩の会から読み解いてみた
大河ドラマ『光る君へ』 (NHK/日曜夜8:00~)6話は「 二人の才女」。舞台は平安時代、主人公は『源氏物語」の作者・紫式部。1000年前を生きた女性の手によって光る君=光源氏の物語はどう紡がれていったのか。6話では、もうひとりの才女・清少納言が登場、ますます注目を集めています。ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと、絵師・南天さんが各話を毎週考察する大好評連載第6回です。
願いがこめられたような台詞
我が家は右大臣家だけでなく左大臣家……源との繋がりを深めるべきだと、父・為時(岸谷五朗)に進言するまひろ(吉高由里子)。 『源氏物語』は恋愛物語というだけでなく、平安貴族の政治劇という側面もある。作者である紫式部に政治的な視線、感覚があってこそだろうから、まひろの言葉は『源氏物語』ファンとして頷く。 「お前が男であったら」 紫式部の父・藤原為時は、いつもこう言っていたと『紫式部日記』にある。しかし、その言葉を受けて具体的にどう返事をしたかは記述がない。 「女であってもお役に立てまする」 このドラマの中で生きる紫式部、まひろは父の目をまっすぐに見て言う。1000年前の彼女も、そう答えていたらいいという願いがこめられたような台詞だ。
兼家そっくりな詮子
婿入り先として左大臣家、妻に源倫子(黒木華)をと、父・兼家(段田安則)、姉・詮子(吉田羊)からダブルプッシュを受ける道長(柄本佑)。 第5話の猫の小麻呂ちゃんアクシデントで、兼家に倫子が印象づけられた。 この 第6話では、まひろと廊下を歩く倫子の姿がある。手に檜扇を携え、しずしずと歩んでいる。自宅で友人と会話しながら歩むのでさえ作法を守っている彼女が、猫を追いかけて走る……? やはりあれは意図して姿を見せたのだと確信した。 そして、もうひとりのプッシュ役・詮子は気づいたのだ。東宮の母、未来の国母として自分が力を振るえることに。左大臣・雅信(益岡徹)への圧迫面接、圧のかけかたが兼家そっくりである。「父の娘ですゆえ、父に似ております」。憎い相手であっても、その技を覚えて身につけられるのは、強き政治家の資質ではないだろうか。