特製キムチでもう一度優勝を 大阪・偕星学園高「キムチ部」部長、山内結花さん まちかど人間録
大阪市生野区の私立大阪偕星(かいせい)学園高校には、オリジナルのキムチ作りに打ち込む「かいせいキムチ部」がある。一風変わった部活だが、昨年、東京都で開かれた「全国漬物グランプリ」では、初出場ながら、各地から寄せられた一流メーカーや専門店のキムチも出展されるなか、見事グランプリを獲得した。 「『近大マグロ』のような学校の顔になる名物『偕成キムチ』を作りたい」。部長の2年、山内結花さん(16)=大阪市=を中心に唯一無二の部活として日々励んでいる。 放課後、グラウンドでサッカー部や野球部員がストレッチを始めたころ、学校食堂の厨房(ちゅうぼう)では部員17人が集まり、キムチの仕込みを始めた。白菜の余分な水分を抜くため、葉を一枚一枚めくり、芯の方に塩を塗っていく「塩漬け」作業。ニンニクや唐辛子を混ぜたオリジナルの漬けダレの調合など、さまざまな工程を手早くこなしていく。 キムチ部が創部されたのは令和4年4月。「今後、学校にずっと残る、引き継がれていくようなものを子供たちと作りたかった」と同校の太田尚樹専務理事(35)の思いが発端だった。当時の生徒会メンバーと話し合い、目標を「大阪コリアタウンに近い学校」という特色を生かした「オリジナルキムチ作り」に決めた。 全員がキムチ作りの素人で、ユーチューブの料理動画を参考にしたほか、コリアタウンの専門店へアドバイスを受けに何度も足を運び、試行錯誤を重ねたレシピを作り上げた。 山内さんが入部を決めたのはキムチ部がグランプリを受賞したすぐ後だった。「(受賞後に)部活が有名になって活動を知った」と話す。でも、周囲からは「キムチ部って面白いの?」と懐疑的な意見もあった。だが、「自分たちの取り組みがきっかけで地元からも応援されるようになった」と今ではすっかり前向きに。 昨年9月には大阪の老舗キムチ専門店「高麗食品」(大阪市生野区)からコラボ商品のオファーがあり、「×(かける)キムチ」として商品化された。名前には「ご飯や豆腐、納豆などほかの食材にかけてもよく合うキムチ」という意味が込められ、具材の大豆ミートが肉のような食感を生む珍しいキムチが完成した。そんな部の評判を聞きつけ、今年はすでに8人の新入生が入部したという。 今年4月の漬物グランプリでは惜しくも落選した。