世界一周を目指した探検家の航海中に発見、16世紀に命名された由緒あるペンギンとは
唯一パタゴニアの本土で繁殖、南米大陸の大西洋側と太平洋側の両方に生息
マゼランペンギンの名前は、ポルトガル出身の探検家フェルディナンド・マゼランにちなんで付けられた。1519年、マゼラン艦隊が世界一周の航海に乗り出した際、南米大陸の先端を通過中に乗組員がこのペンギンを見つけたのがきっかけだった。マゼランペンギンはアルゼンチン、チリ、英領フォークランド諸島などを中心に、南米大陸の大西洋側と太平洋側の両方に生息している。パタゴニアの本土で繁殖する唯一のペンギンだ。 【動画】ペンギンの夫と愛人の熾烈な戦い 他の17種のペンギンと同様にマゼランペンギンも黒い背中と白い腹部が特徴だ。黒と白のツートンカラーにはカモフラージュ効果がある。海に潜っている時、黒い背中は暗い海の色に溶け込み、空からの天敵に見つかりにくい。また白い腹部は空からの光に紛れ、海中の天敵や獲物から見つかりにくい。 流線型の体形に水かきが付いた足や、櫂(かい)の役割をする長いフリッパー(翼)を持つペンギンは、泳ぐのに理想的な体をしている。また、ペンギンたちは、皮脂腺から出る脂をくちばしでとって全身に塗ることで、寒さから身を守っている。 他のペンギンとは異なるマゼランペンギンの特徴は、白い腹部にある2本の黒いラインだ。1本は首の周りにある太いラインで、もう1本は胸元を頂点に両足にかけてアーチ状に入っている。また、両目の上から首にかけて顔を取り囲むように白い羽が生えている。
生息地、繁殖、渡り
マゼランペンギンにはさまざまな習性がある。毎年9月から翌年4月中旬までの繁殖期には、同じ相手とつがうだけでなく、毎年同じ営巣地で産卵し、ヒナを育てる。営巣地となるのは概ね沿岸地域で、茂みの下などの隠れた場所に巣を作る。 オスはメスよりも先に営巣地に到着すると、まずはいつもの巣穴を確保する。そして数日後、メスが到着する。メスは1シーズンに平均して卵を2個産み、子どもが自分で餌を採れるようになるまで、夫婦は共同で子育てをする。マゼランペンギンの狩場は海だ。アルゼンチンの大陸棚などでカタクチイワシ、イワシ、スプラット(ニシン科の小魚)などを捕って食べる。 繁殖期が終わると、マゼランペンギンは冬に備えて、海を北へ移動する。多くはペルーやブラジルの沖合で暮らしているが、中にはこうした渡りで6400キロも移動するものもいる。