「ダイナミックプライシングは導入しない」と言い切る九州の雄・AZホテル。「元ジョイフル子会社」で「365日4950円均一」なコスパ最強ビジホの実態とは?
そのなかでも、均一価格の元になっているのが、「Everyday Same Low Price(エブリデー・セイム・ロープライス、以下、ESLP)」という考え方だ。アメイズではこれを、「お客様が気軽に安心して、いつでもリーズナブルに、同じ価格で利用できる」ことを重視すると捉え、ホテルのコンセプトとしている。 またその根幹には、「経営者は、誰でもほしいものを、それなりの品質で手に入れる社会を構築することが大切だ」という思想がある。
■ポジティブな薄利多売 このような理論、思想に基づいてホテル経営を行う企業は非常に珍しい。アメイズがそうなった理由は、前身がファミリーレストラン『ジョイフル』の子会社だったことにある。 そもそもAZホテルの歴史は1994年、旅館チェーン『亀の井ホテル』を㈱ジョイフルが買収したことにはじまる。その後9年は旅館として経営していたが、 2003年、亀の井ホテルがジョイフルの子会社を離脱。またこの際、ジョイフルの当時の社長であった穴見保雄氏が辞任し、アメイズの取締役社長に就任。旅館経営は費用面で難しかったことからリブランドが行われ、ビジネスホテル・AZホテルが誕生した。
この穴見氏により、ジョイフルがファミレスとして掲げていたESLPの思想がAZホテルに受け継がれ、均一価格が設定されたのだ。そしてその後、2013年に、アメイズとして福岡証券取引所に単独上場した。 しかし、それから11年が経って時代や物価は変わりつつある。これまではずっと価格は据え置きだったが、「もう少し値上げしては」という議論も社内で出ている。 この状況についてアメイズ総務部・広田浩三氏は、「この先値上げを考えざるをえない状況なのは事実です。ただし値上げしても、あくまで均一価格で。ダイナミックプライシングの導入や、繁忙期と閑散期での価格変動はありません」と言い切る。
AZホテルの顧客は贅沢な滞在を願う人ではない。あくまで「安定した低価格」を求める人々であり、となれば価格変動は、長期的に見てネガティブ要因になるからだ。ポジティブな薄利多売、とでもいうべきビジネスモデルなのかもしれない。実際、AZホテルの稼働率は常時約半数を超えており、それで十分利益はとれている。 AZホテルには、均一価格のほかにもESLPに基づく3つの特徴的サービスがある。順番に解説しよう。 ■AZホテルの3つの魅力とは?