大谷翔平はなぜ「異次元の存在」でもひたすら謙虚なのか…花巻東の寮生活で欠かさなかった「野球以外の日課」
■20人ほどの番記者が待ち構えていた 大谷は控えめで、恥ずかしがり屋ですらある。それでも、彼の写真は街のあちこちで見られる。電車の車内からデパートのショーウインドーまで、あらゆる場所に彼が写った広告が掲示されている。だから、野球ファン以外にもその存在が知られている。 彼が今季限りで日本を離れ、メジャーリーグでプレーすると決意していると複数のメディアが報じると、大きなニュースになった。報道は匿名の情報源を引用していた。 その2日前、大谷は来年どこでプレーしたいかと聞かれ、「今はまだ考えていません」と答えた。「シーズンが終わるまでベストを尽くすことだけを考えています」 9月中旬の水曜日の試合は、NPBのパ・リーグの、5位のファイターズと千葉ロッテマリーンズの対戦。ファイターズ番の20人ほどの記者は、札幌ドームのメディアセクションから試合を見るのではなく、選手の駐車場近くのロビーに張り込んでいた。 ■「すみません」とだけ言った大谷の胸中 日本では、その日に登板予定のない先発投手は球場にいなくてもいい。大谷は、この試合では打席に立つ予定もなかった。だから報道陣は、試合が終わる前に大谷が外に出てくるのを待った。予想通り、試合開始から数時間後、彼が現れた。大混乱が起きた。大谷は頭を下げたまま駐車場に向かい、記者たちが後ろを全速力で追いかける。カメラのフラッシュが、暗がりを明るく照らした。 大谷は白い車の助手席に滑り込み、夜の闇の中へと走り去った。 一番近くにいた記者たちは、彼が「すみません」と言うのを聞いた。これは文脈によって「ごめんなさい」または「失礼します」を意味する日本語だ。大谷はコメントができないことを申し訳なく思っていたのか? それとも、車に乗るために記者たちに道を空けるように頼んでいたのか? 誰にもわからないし、誰も気にしていなかった。重要なのは、彼が何かを言ったということだ。 その「すみません」という一言は、その後の数時間、日本中で報道され続けた。