「ファンはイライラ」とマキロイが苦言も PGAツアーとリブゴルフ、統合交渉は遅々として進まず
「交渉分科会からの連絡や召集は一度もない」
実際、交渉分科会のメンバーの1人であるマキロイは、「今年6月以降、交渉分科会からの連絡や召集は一度もない」と語り、事実上、交渉がストップしていることを示唆している。 リブゴルフが創設された当初、マキロイはアンチ・リブゴルフの急先鋒だったが、昨年末にスペイン出身のスター選手、ジョン・ラームがリブゴルフへ移籍すると、リブゴルフ批判のトーンを和らげた。最近では、リブゴルフ擁護とも受け取れる発言さえ口にするようになっている。 「リブゴルフと揉めたこともあったけど、それは、もう昔のことだ。ゴルフファンは騒動続きのゴルフ界とPGAツアーにイライラしているし、誰もがその解決策を求めている。PGAツアー選手とリブゴルフ選手が同じ舞台で競い合うことができるチャンスは、今はメジャー4大会しかないけれど、競い合う機会は1年に4回ではなく、それ以上あるべきだと僕は思う」 すでに欧州のDPワールドツアーは、リブゴルフ選手が然るべき罰金を支払った上で一定の待機期間を経れば、ツアー競技に復帰できるという救済処置を実施しており、先週もティレル・ハットンがDPワールドツアーの大会、ベットフレッド・ブリティッシュ・マスターズに出場した。
日本ツアーにオイルマネーが流れ込む?
だが、PGAツアーは、リブゴルフ選手のメンバーシップを停止し、彼らが復帰する道を完全にふさいだままで、彼らを受け入れる姿勢は、一切見せていない。そんなPGAツアーの頑なな拒否反応を傍目にして、マキロイは、こんなことを言い始めている。 「そろそろPIFは、投資先をPGAツアーではなく、別のツアーへ変えたほうが良いのでは?」 PGAツアーは後から交渉のテーブルに着いたSSGとパートナーシップを結び、PIFとの交渉はちっとも進まない。だから、いっそのことPIFはPGAツアーとの交渉を見限って、別のツアーと手を組むことを考えるべきではないかというマキロイの提言は、案外、的を射ているのかもしれない。 すでにリブゴルフがアジアツアーを傘下に置いていることを考えると、PIFが手を組む相手として日本ツアーに目を向ける可能性もあるのかもしれないと思えてくる。 スポンサー不足、試合数不足、集客力も決してあるとは言えない現在の日本ツアーに、サウジアラビアの潤沢なオイルマネーが流れ込んでくるとしたら、日本のゴルフ界関係者や選手、ファンはどう受け止めるのか。 今から考えておいても、損はないのではないだろうか。 舩越園子(ふなこし・そのこ) ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。 デイリー新潮編集部
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