鹿児島県 奄美・沖縄世界自然遺産科学委 モニタリング指標希少ネズミ・昆虫・植物追加 シロアゴガエル、ソテツシロカイガラムシ「効果十分に表れず」
学識経験者らで作る「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島 世界自然遺産地域科学委員会」(委員長・中島慶二江戸川大学国立公園研究所長、委員12人)は25日、奄美市名瀬のアマホームPLAZA(市民交流センター)で、2024年度会合を開いた。環境省、鹿児島・沖縄両県、市町村の担当者などオンラインを含む約80人が参加。遺産価値を表す新たなモニタリング(継続監視)指標として、希少ネズミ類などを加える原案が示された。 同委員会は、世界自然遺産登録地域の自然環境を把握し保全管理していくため、学識経験者による科学的見地からの助言を得ることを目的としている。 25年度に改定予定の包括的管理計画(16年策定・18年改定)の改定内容について環境省は、「外来種」「観光管理」といった基本方針に、地域別行動計画(個別事業)を連動させる考えを示した。 モニタリング(継続監視)計画では、新たな評価指標の原案として、希少ネズミ類・希少植物・希少昆虫類を調査項目に加えた。鳥類のリストにアマミヤマシギの記載がないことについて、委員から異議を唱える声が相次ぐ場面もあった。 23年度モニタリング評価が示され、交通事故による希少種の死亡事故(ロードキル)の発生について、全ての地域(奄美大島・徳之島・沖縄島北部・西表島)が、遺産価値に一定の悪影響が認められるとされる「B評価」となった。 ネコの管理計画が未策定な徳之島については、遺産地域・緩衝地域の生息状況、飼いネコの管理状況ともにB評価。飼養状況についても、マイクロチップ装着率約20%(奄美大島約70%)、不妊去勢手術率約80%(同90%)、室内飼養率約50%(同約80%)とデータを明記し、「普及啓発の強化が求められる」とした。 質疑の中で委員からは、徳之島で防除作業が進められているシロアゴガエル、奄美大島での被害拡大が続くソテツシロカイガラムシへの対策について、「効果が十分に表れていない。手法を考える必要がある」といった意見が出された。 特定外来植物や指定外のつる性植物の侵入を懸念する声もあり、環境省は「地域ごとにリストアップし指標作りを急ぎたい」とした。 中島委員長は「(世界自然遺産の)知床で、ソーラーパネルの新規建設計画が進んでいる。想定外の事態が奄美地区でも起こる可能性がある。遺産価値に対し影響がある場合、新たな法規制を検討する必要がある」とする見解を示した。