進む世界のデジタル化。今までなかった便利な検索に期待
スマホを常用していて、特に重宝しているGoogleの機能がふたつある。 そのひとつは楽曲検索だ。日常的な生活をしていて、耳に聞こえてくる音楽が気になることがある。この曲なんだっけとか、この曲いいなとか、この声は誰の歌だっけなどと、理由はいろいろだが、とにかく環境に流れている曲の情報を知ることができる。
検索機能をウィジェットとして登録しておき、それを開いてマイクで拾わせてもいいし、Google検索でマイクをタップし、「曲を検索」で調べさせてもいい。 これで知った楽曲はたくさんある。暮れには、というより正確には年始におせちを食べながら録画した紅白歌合戦を流し見していたが、楽曲検索の機能を使って知った曲がそれなりにたくさんあったのにちょっとした感動を覚えた。 ■音楽との出会いはたいてい偶然 昔はそうだった。ラジオから聞こえてくる曲と、その紹介のDJのトーク、TVで初めて見る新人歌手の出で立ちと音楽などで新しい楽曲を知った。出会いはたいてい偶然だった。 音楽の発見から偶然の要素が希薄になってきている今、こういう機能がいつでも使えるのは重宝する。配信サービスでついプレイリストを再生するなど、それが支持されているトレンドもある。本当はみんな偶然を求めているのだ。 重宝しているもうひとつの機能はGoogleレンズだ。楽曲検索は聞こえる音の正体を教えてくれるものだが、こちらは、目に見える何かの正体を教えてくれる。 簡単な例では、きれいな花が咲いているのを見つけたときに、その花の名前を教えてくれる。花に限らず、樹木でも、建物でも、食べ物でも、オブジェでも、芸術品でも、それが何であるかを知ることができる。 ■視覚と聴覚を拡張するような検索が可能に 世界のデジタル化、そして、そのインデックス化が着々と進行している。だからこそ、スマホのような簡単なデバイスを使うだけで、かつてでは考えられなかったような検索ができるようになっている。 いわば、これらは視覚と聴覚の拡張だ。 となれば、コンテンツとして、なんらかのリアルを集めて披露するサービスは、その方法論を少し見直す必要が出てくるのではないだろうか。具体的には美術館や博物館といったところだ。 今、東京の上野界隈の美術館などにでかけると、平日の昼間でも、それなりに多くの入館者で賑わっている。大型展などは予約をしないと入館できないし、運良く都合のいい時間に入れたとしても、至近距離でじっくりと展示物を鑑賞できるとは限らない。見えるのは人の後頭部だけということだってないわけではない。 気になる展示会は、それが地方であっても、地方の方がゆったりと鑑賞できるといった理由ででかける人も少なくないらしい。 これらの展示物には、たいてい、その解説が小さな文字で書かれたパネルが脇に貼られている。入館者の多くは、それを読むのに時間がかかり、肝心の展示物をじっくり見る余裕がなかったりするのだから、まさに本末転倒だ。 ■情報をもっと便利に得られる世界に期待 もし、このキャプションパネルがQRコードで掲出され、それでスマホを使ってテキストを読めたら、あるいは、URLを開くことで解説ページを読むことが出来たら、解説をじっくりと読みたい人は、他の人の邪魔にならないところで深い知識を参照できるのにと思う。あとでもう一度、その解説ページを読むことができるようになっていればもっといい。 だが、明日からでもできそうなそんなサービスが提供されていることはまれだ。モバイルネットワークが圏外になっているところもある。写真を撮っていると勘違いされて注意されてしまうこともある。 そんなことをしたら、図録が売れなくなるとか、そういう心配もあるかもしれないが、そもそもそういうことで利益を確保するビジネスモデルはもうすぐ崩壊するだろう。いわゆる学芸員、キュレーターといった職業にも変革が求められているのが今という時代だ。 この先、いろいろな職業が新たな変革を求められるようになる。自省をこめてではあるが、コンテンツを並べてみせるビジネスモデルはそこにある種の危機感を感じなければなるまい。 ■ 著者 : 山田祥平 やまだしょうへい パソコン黎明期からフリーランスライターとしてスマートライフ関連の記事を各紙誌に寄稿。ハードウェア、ソフトウェア、インターネット、クラウドサービスからモバイル、オーディオ、ガジェットにいたるまで、スマートな暮らしを提案しつつ、新しい当たり前を追求し続けている。インプレス刊の「できるインターネット」、「できるOutlook」などの著者。
山田祥平