峠の岩陰にトイレットペーパーが…南アルプス駒ヶ岳、登山者の排泄物でのイメージ悪化懸念 用を足せないルート、人気の一方で直面する「トイレ問題」
南アルプス駒ケ岳で「清掃登山」
トイレットペーパーや菓子の包装紙、空き缶…。南アルプス駒ケ岳に向かう登山道沿いでごみを拾いながら、日帰り山行を楽しむ「清掃登山」が9月7日に開かれた。長野県伊那市などでつくる「東駒ケ岳開山200周年記念事業実行委員会」が主催。県内から50~70代の男女8人が参加した。 【写真】休憩所として使われている峠の岩陰にはトイレットペーパーが…
岩陰にトイレットペーパーが…
参加者は午前9時半に南ア北部の登山口、北沢峠を出発。約1時間半後、休憩場所となることが多い仙水峠に着いた。用を足す場所になっているという岩陰を確認すると、トイレットペーパーが岩にへばりついていたり、隠すように紙が放置されていたり…。同市から参加した60代の男性は「登山道脇に注目して歩くと、ごみが思ったより見つかった」。参加者は空き缶などのごみと一緒に回収した。
一行は午後1時ごろ、駒ケ岳の6合目に当たる駒津峰に到着。昼食を済ませ、北沢峠に午後3時半に戻った。清掃登山の参加費は林道バスの運賃を含めて1人8千円。長野市から参加した70代の男性は「頻繁に山に登るので、登山道の整備に協力したかった」。 実行委の担当者は「お金を払って国立公園のごみを拾ってくれる。価値のある催しだった」と実感。環境に配慮しながら自然を楽しむ催しがさらに広まることを期待した。
往復8時間、トイレなし
北沢峠から双児山、駒津峰を経て駒ケ岳へ登るルートは往復で約8時間かかるが、トイレはない。登山者の排せつ物による高山植物や水質への影響、悪臭によるイメージの悪化が懸念されている。
続く携帯トイレ利用の啓発活動
伊那市は、南アが国立公園に指定されて半世紀を迎えた2014年、携帯トイレと密閉袋を市主催のイベントで配り始め、登山者への啓発活動を続けている。登山者への市の聞き取り調査によると、14年に20%だった市販の携帯トイレなどの携行率は、22年に40%へ上昇。29年度までに50%へ引き上げたいとしている。
簡易トイレブースを設置
南アで携帯トイレを使いやすい環境を整えようと昨年から、用を足す際に利用できる強化段ボール製のトイレブースを登山道脇に試験的に設置。駒ケ岳へのルートでは8月中旬~10月下旬、駒津峰と双児山の間の樹林内に置いた。 災害時用の組み立て式簡易トイレブースで、内側に便座が一つあり、無料で使える携帯トイレを備える。便座に袋状の携帯トイレをかぶせて使った後、各自が持ち帰る仕組み。京都府から訪れた50代の女性は下山中に利用し「ブース内もきれいで使いやすかった」と好印象を抱いていた。