不倫報道から『極悪女王』で復活した唐田えりか 長与千種本人をも納得させた「撮影のウラ側」
「絶対にこの人を演じたい」
9月に配信されて以来、日本のNetflix週間TOP10で3週連続して1位を獲得するなど話題沸騰の『極悪女王』。’80年代を熱狂の渦に巻き込んだ女子プロレスラーの抗争劇をリアルに描き、大きな波紋を呼んでいる。中でも衝撃を与えたのが、長与千種役を演じる唐田えりかではないか。 【勢ぞろい…写真あり】唐田えりか&剛力彩芽&ゆりやん ドラマ『極悪女王』打ち上げを発見撮 『極悪女王』は’80年代の女子プロレスブームを牽引した、“最凶のヒール”ダンプ松本の知られざる半生を描いた作品。ダンプと抗争を繰り広げた『クラッシュ・ギャルズ』をはじめ当時、全日本女子プロレスに所属していたレスラーたちがほぼ実名で登場。撮影の半年前から肉体改造とトレーニングに取り組み、プロレスのシーンはほとんどスタントなしで演じきっている。 今作に、プロレスのスーパーバイザーとして関わった長与千種は、こう話している。 「いろんなものを背負って、このドラマで何か変わりたい。そんな思いをひしひしと感じて、彼女たちがリングに上がるたびに泣けてきちゃって」 特に唐田えりかの抱える思いは、切実ではなかったのか。 「唐田は’20年1月に東出昌大との不倫が発覚。バッシングの嵐が吹き荒れ芸能活動は休止。その渦中で初めて受けたオーディションが、この『極悪女王』です。長与のことを調べていくうちに、崖っぷちから這い上がろうとする彼女の姿が自分のことのように思え、『絶対にこの人を演じたい』という強い気持ちを持つようになったと話しています」(ワイドショー関係者) 落ちこぼれからスタートして、スターの階段を駆け上っていく長与千種は私・唐田えりかそのもの。何としても演じたい。オーディションでも、唐田はその思いをぶつけた。 「映画『孤狼の血』シリーズや最新作『十一人の賊軍』を手掛け、本作の総監督を務める白石和彌さんは『彼女の切実な思いにグッとくるものがあり、何と言っても華があった』『人生の再出発に当たって、どうしても芝居がしたいという思いが伝わってきた』と当時を振り返っています」(制作会社プロデューサー) しかし、長与千種役を演じる道は険しかった。 ライオネス飛鳥役を演じる剛力彩芽は、運動神経が抜群。それに対して運動音痴の唐田は、初めて受け身の練習をして「ぎゃー」「痛い」といった声を上げる始末。しかも肉体改造のために、トレーニングをしながら半年間で10キロほど増量しなくてはならない。そのため、お腹は常に満腹の状態だったという。 しかし覚えなければならないことは、他にも山ほどあった。週3回のトレーニング、週2回のプロレス練習に加えて、リングで歌う歌やダンスのレッスン。方言指導の先生による長崎弁の特訓も待っていた。そんな中でも最後まで唐田を苦しめたのが、長与の得意技・フライングニールキックの習得だった。 「この技は、格闘家の前田日明が考案したとされる大技。みずからロープに飛んで勢いを付け、相手の首や顔めがけて繰り出す回転蹴り。橋本真也や蝶野正洋といったスター選手がよく披露していた難易度の高い技だけに、代役を使おうという声も上がりました。それが悔しくて、スーパーバイザーの長与さんに詰め寄り、『やります』と言って大粒の涙を流す姿が印象に残っています」(前出・プロデューサー) そんな唐田にとって一世一代の晴れ舞台となったのが、1985年に大阪城ホールで行われた伝説の“敗者髪切りマッチ”ではないか。 ◆唐田の演技は「誰かの応援歌」に 「1985年8月28日に行われたこの大会で、長与千種とダンプ松本がシングルマッチで激突。紋付袴姿で登場した長与は、凶器攻撃で大流血。セコンドからタオルが投げ込まれても『まだやれる』と投げ返す。しかしダンプに強烈なイス殴打を食らって長与は無情にも10カウント負けを喫しました。リング上で長与の“髪切りの儀式”が行われている間中、ファンの女の子たちの悲鳴に似た鳴き声が聞こえてくる。あまりにも過激な試合に中継していたフジテレビには抗議の電話が殺到していました」(前出・ワイドショー関係者) 今作のオファーを受ける段階で坊主を覚悟していた唐田。ところが本番直前に髪を切られる恐怖とプレッシャーから、リングサイドで見守る白石総監督や所属する事務所の社長、企画・脚本・プロデュースに携わった鈴木おさむ氏らと“グータッチ”を交わし、パワーを注入。こうして一発勝負の名場面は生まれている。 クランクアップ後に、長与本人から、 「めちゃくちゃプロとしての根性を持っている」 「若い頃の自分を見ているようだった」 「唐田が長与千種を演じてくれてよかった」 と言われ、喜びを噛み締めたという唐田。そんな彼女をオーティションで抜擢した白石総監督は、作品を通して俳優・唐田えりかへの評価をこう語っている。 「自分で演じたい役どころをしっかり表現できる。よく憑依型と言いますが、彼女も多分そのタイプで演じる瞬間にスイッチが入る人だと思います。僕が死ぬ前に見たいと思う自作が、この『極悪女王』。ドキュメンタリーに近い唐田たちのプロレスを見ているだけで、きっと誰かの応援歌になると思う」 近頃は、一人で居酒屋にも飲みに行くという唐田えりか。俳優としての第2章。今度こそ、大輪の花を咲かせてほしいものだ――。 文:島右近(放送作家・映像プロデューサー)
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