トランプ氏の「粛清」人事はあるのか 個人的忠誠心が尺度、1期目の安全弁がない危うさ 「トランプ2・0」の衝撃⑤完
だが、より忠実な信奉者に固められた2期目でそうした「安全弁」は働くだろうか。
第1次政権を中枢で支えたジョン・ボルトン大統領補佐官やマット・ポッティンジャー副補佐官らはトランプ氏から離れた。トランプ氏の首席補佐官を務めたジョン・ケリー氏は米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)のインタビューで「ファシストの定義に当てはまる」とトランプ氏を批判した。
■「選挙向けのポーズ」という見方も
忠誠心を重視するトランプ氏は同時に、政敵への強烈な「復讐心」を隠していない。選挙戦では、民主党のバイデン大統領やその家族、ハリス副大統領、選挙戦で敵対した共和党の反トランプ派らを「犯罪者」「反逆者」だとし、「訴追する」などと語った。
自身の起訴に関わった検事や元側近、民事訴訟でトランプ氏側に不利な判決を下した判事らへの報復も公言している。
共和党内には、こうした発言は「選挙向けのポーズにすぎず、実際には現実路線に落ち着く」とみる向きもある。だが、過激な発言が憎悪や不信を広げ、社会の分断をいっそう深めてしまったことは確かだ。
トランプ氏の一連の言説の核となっているのは、政治家やエリート官僚などからなる「ディープステート(闇の政府)」が米国を牛耳っているとする主張だ。彼らが推進したグローバル化や気候変動対策などが米国の衰退を招いたとし、「根絶」を訴える。
そのためにトランプ氏は、連邦政府の政治任用ポストを信奉者で固めるだけでなく、官僚組織に対しても数万人規模の粛清人事を行うと主張している。選挙戦では「国家安全保障関連の部署や情報機関から腐敗分子を一掃する」ことなど10項目の計画を発表した。
第1次政権でトランプ氏のスピーチライターや上級顧問を務めた腹心、スティーブン・ミラー氏らが権力機構再編の計画を練っているとされる。11日、米メディアは、トランプ氏が政策全般を統括する政策担当次席補佐官にミラー氏を起用する方針だと伝えた。
トランプ次期政権の足元がどれだけ盤石なものとなるのかを、世界が注視している。(ワシントン 大内清)=おわり