「専用めがねに…」アメリカの皆既日食で、懐かしの“フロッピーディスク”が注目された理由とは
北米で話題を席巻した皆既日食で、70年代に開発されたフロッピーディスクが再び脚光を浴びた。本来の用途とは異なる形で、日食を一目見たいという人々の願いを叶えたようだ。 【動画】フロッピーを使って日食を見る人の様子。 現地時間4月8日、メキシコ、アメリカ、カナダにまたがる広い範囲で皆既日食が観測された。2017年以来7年ぶり、現地で次に観測できるのは20年後という貴重な機会に、黒く光る美しい太陽の姿を一目見ようと多くの人が空を見上げた。 皆既日食は事前に予告され大きな話題となっており、経済効果は1兆円超にのぼったとされる。人々は目を保護しながら太陽を観測できるよう、日食めがね(太陽観察フィルター)を買い求めた。
売り切れの日食めがね、フロッピーで代用!?
日食めがねは多くの地域で売り切れとなり、出遅れた人々は頭を抱えた。通常のサングラスなどでは遮断効果が弱く、太陽を見続けると目を損傷してしまう危険がある。 そこで代替品として注目されたグッズのひとつが、古い記憶媒体のフロッピーディスクだ。ディスクは磁性体が塗布または蒸着され、透過度の低い黒色になっている。透かして天を見上げれば、太陽光の光量を弱めることができる。 現在、パソコンの外部記憶媒体といえばSDカードなどが主流だが、70年代から90年代頃まではフロッピーディスクが使われていた。 おもに3種類の規格が存在し、例えば中程度の5インチディスクでは、ほぼ正方形の紙製の保護ケースの中に、直径5.25インチ(約13センチ)の磁気ディスクが入っている。両目を覆うに十分な大きさがあるこのディスクを、日食めがねに転用するアイデアだ。
米メディアがチャレンジ
米テックメディアのヴァージは、「仕方がないのでフロッピーディスクで日食を見ることにした」との動画をTikTokで公開。柔軟にたわむフロッピーディスクの特性を生かし、目の周囲に沿うよう軽く湾曲させながら使う同誌記者の姿が収められている。ディスク中心部に空いた円から鼻を出す様子は多少こっけいだが、問題なく使えたようだ。 動画では続いて、携帯のカメラのレンズに被せ、フィルターとして使用した作例を紹介。全体的にフィルムの影響を受けて赤みを帯びているものの、部分的に欠けた太陽の様子を捉えることに成功した。 現在となってはフロッピーディスクは容量が小さすぎるため実用的でなく、民間ではほぼ使われていない。若い世代では各種ソフトの「保存」アイコンでした見たことがないという人も多いようだ。遠い昔に姿を消したフロッピーが、思わぬ形で再び活躍した。