騒音訴訟で注目、厚木基地の所属部隊と判決の効果は?
神奈川県にある厚木基地の騒音訴訟で横浜地裁は21日、やむを得ない場合を除き自衛隊機の22時から翌朝6時までの飛行差し止めと結審日までの賠償賠償約70億円の支払いを命じました。自衛隊基地における騒音訴訟で、実際の飛行差し止めとなったのは今回の判決が全国初となります。差し止めが命じられた厚木基地の所属部隊とはどのようなものでしょうか?
厚木基地に所属する自衛隊の配備状況
現在、厚木基地に置かれている航空部隊は「第4航空群」と呼ばれており、主に太平洋から日本海を防衛範囲として監視や救難などの任務を行っています。 そのなかの1つ、「第3航空隊」は哨戒機P-3Cを使って警戒監視を行っているほか、潜水艦と遭遇した際の対潜水艦戦や災害救難時の救難捜索や状況偵察などの役割も担っています。これらの通常任務の他に、海外派遣としてマレーシア航空機の墜落事故の捜索支援やソマリアの海賊対策などにも参加しています。 また、最新装備の性能調査や評価などを行う「第51航空隊」では、配備されたばかりの国産哨戒機「P-1」の運用試験などが行われています。 さらに、水陸両用の飛行艇US-1AおよびUS-2による救難任務や離島からの急患輸送など行っている「第71航空隊」は2013年6月にニュースキャスターの辛坊治郎氏を救出したことで一躍知られるようになった部隊です。
厚木基地に所属する米軍機の配備状況
厚木基地に駐在する米軍は主に海軍で、神奈川県の横須賀基地を母港とする空母「ジョージ・ワシントン」が入港中の時期のみ同艦の艦載機部隊「第5空母航空団」の機体が厚木基地に展開され、硫黄島や群馬県上空などでの訓練が行われます。 艦載機の中にはジェット戦闘攻撃機のF/A-18E/F「スーパーホーネット」を始め、救難ヘリコプターや早期警戒機E-2C「ホークアイ」、輸送機C-2「グレイハウンド」、電子戦機EA-18G「グラウラー」などが含まれています。 近年、空母「ジョージ・ワシントン」は5月~8月と9月~12月前後に航海に出るパターンが多く、特に5月の出港直前には艦載機パイロットが空母に離着艦するための資格を取得するために夜間離着陸訓練を含む「地上着艦訓練」を行う必要があります。この資格は最後に空母に着艦してから29日で失効してしまうため、長期入港の後は必ず行われます。 なお、厚木基地の艦載機は将来的に山口県の岩国基地へと移管されることが決定していますが、具体的な移転スケジュールは示されていません。
この判決の現実的な効果
今回の裁判において、原告側は「全ての航空機」の飛行差し止めを求めたものの、米軍機については「国に対してその支配の及ばない第三者の行為」とされ、請求は棄却されました。 今回飛行差し止めを受けた海上自衛隊では、判決以前より内規で22時から翌朝6時までの飛行を自粛しており、夜間訓練の主体は自衛隊ではなくあくまでも米軍機によるものと言われています。 そういった背景から、米軍機の夜間離発着訓練が差し止められない限りは根本的に解決されないといった意見も多数見られており、原告団も引き続き控訴の上、米軍機の飛行差し止めについても求めていくとしています。