米大陸に新幹線の夢、テキサス高速鉄道の計画復活で現実に一歩近づく
「10ヤードラインまで来ていたのに」と振り返るのは、ロビー団体テキサス・レール・アドボケーツのピーター・ルコディー氏。テキサス・セントラルは2022年、取締役会を解散し、事業は停止したかに見えた。
岸田文雄首相
状況が変化したのは2023年8月。アムトラックはテキサス・セントラルと協業する機会を模索していると発表した。ホワイトハウスのファクトシートによれば、岸田文雄首相が今年4月にバイデン米大統領と会談した際、このプロジェクトが話題に上った。
アムトラックはこのプロジェクトを進めるべきかどうか、まだ審査の段階だとバイフォード氏はいう。「新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が去った今、ビジネス面での論拠は極めて強い」と述べた。
欧州やアジアで普及している高速鉄道サービスを、北米の旅行者は知らない。 日立レールが最近サンフランシスコと首都ワシントンの住民を対象に行った公共交通に関する調査では、高速鉄道路線があれば短距離便の削減を支持すると54%が回答した。
少なくとも今のところ、政治的な風向きも良好だ。ブティジェッジ米運輸長官は「高速鉄道およびこのプロジェクトに極めて協力的」だと、バイフォード氏は語る。「政府はこのプロジェクト成功を望んでいる」と述べた。
テキサス・セントラルが参考にできる唯一の前例は、民間資本による米鉄道サービスであるブライトライン・フロリダだ。フロリダ州マイアミとオーランドを最高時速約200キロメートルで結ぶこの鉄道は、運営後最初の四半期で月間利用者数が平均24万1000人と、予想を下回っている。
テキサス・セントラルの資金集めは厳しい道のりだ。しかしリック・ハーニッシュ氏ら賛成派は高速鉄道の革命が全米に広がることを切望する。「すでに大きな進展を遂げた。実際に2つのプロジェクトが着工していることは、情勢を一変させる」とハーニッシュ氏。「テキサス・セントラルの計画が動き出せば、事態は前に進む」と述べた。