人材育成に力注ぎ、顧客に笑顔 大手との差別化「全く逆の方法で成功」 埼玉でギネス記録の世界一にも認定されたクレーンゲーム専門店 運営する企業に迫った一冊 経営コンサルタントが刊行
埼玉県行田市や八潮市などでクレーンゲーム専門店「エブリデイ」を営業し、注目されている北本市の東洋。創業者である中村秀夫社長(63)が持つ企業哲学に迫った書籍「集客が劇的に変わる! クレーンゲーム専門店エブリデイの経営戦略 BADプレイスでも儲(もう)かる理由」(ごきげんビジネス出版)を、加須市に住む経営コンサルタント井上岳久さん(55)が刊行した。著書からは、人材の育成に力を注ぎ、顧客に笑顔をもたらすことにこだわる徹底した姿勢が見えてくる。 ユニークな景品に挑戦できるクレーンゲームが並ぶ店内【写真2枚】
1987年設立の東洋は、北本市に家電ディスカウント店を90年に開店して本格的に創業した。その後、店内に置いたクレーンゲームに客が笑顔で興じる姿に着目。2001年に初のクレーンゲーム専門店を鴻巣市にオープンし、業態の変換を進めていった。11年、行田市郊外の空き店舗に240台を置く行田店を開店し、12年にギネス記録の世界一に認定。工夫を凝らした景品を社員が企画するなどして、県外からも客が訪れる人気店へ成長していった。同社は現在、貴金属のリサイクル店なども展開している。 井上さんが中村社長の経営について著作を書いたきっかけは、井上さんのPR講座を中村社長が聞きに来たことだった。井上さんは「ゲームセンターなどのアミューズメント業界は、人を徹底的に減らして店を運営し、投資を回収するのが一般的。だが、中村さんは多くの人材を育て、全く逆の方法で成功している。その理由をルポ風に紹介したかった」と説明する。
「笑顔創造業」を掲げる東洋は、客に喜びを提供することに労を惜しまない。新鮮な地元野菜が取れるクレーンゲームを置いたり、作業所の障害者が作ったパンやクッキーをゲームの景品にしたり、社員の自由でユニークな発想を尊重。景品を手に入れるコツを伝授する「クレーンゲームアドバイザー」まで常駐させている。社員研修は年間100回ほど実施。中村社長は「お客さまの笑顔と感動は、人のぬくもりがないと生まれない。中小企業の私たちは、そこを求めていかなければ」と、大手との差別化を貫く。 農業振興や障害者の自立など、景品を通じて社会課題にも関わり、ほかの店が撤退した場所に家族連れを中心とした客を集めて地域を活性化させている。中村社長は「場所が悪いとか、人口が減っているとかいう課題は、言い訳にしてはいけない。地方でそうした問題に直面している人に読んでもらえたら」と強調。井上さんは「この本を自分たちで打開策を考えるヒントにしてほしい」と願った。
税込み1870円。問い合わせは、井上戦略PRコンサルティング事務所(電話03・6276・7266)へ。