「かつて日本は『ストリップ列島』だった」…『踊る菩薩』の著者が明かす、令和の時代にあえて”一条さゆり”を描いた理由
伝説のストリッパー・一条さゆり
彼女の生きた時間をたどることは、その巨大産業で人気を獲得していく過程と、頂点から転落する姿を追うことである。そこには戦後日本の復興、高度成長、そしてバブル経済とその崩壊を生きた日本人の姿があるはずだ。そう考えた私は、いずれ彼女を描き直そうと資料を集めていた。 そして、旧知の日刊ゲンダイ特別編集委員、二口隆光からの提案を受け、2021年3月末から同紙に「伝説のストリッパー 一条さゆりとその時代」を連載した。 さらに連載が終わった後も取材を重ねた。漫才の中田カウス、スタジオジブリの鈴木敏夫などからも話を聞き、この本を書いた。結果的に、ほぼ書き下ろしの内容となった。 カウスや鈴木、そして弁護士の杉浦正健ら彼女と交流した者は例外なく、彼女を話題にするとき、懐かしそうに笑みを浮かべた。彼女自身は警察・検察から危険視され、警告を受けながらも、日本人を励まし、楽しませ続けた。 一条は引退し舞台を降りた後も、波瀾万丈の時間を生きた。劇場内にとどまらず、60年の全生涯をかけ、その「芸」を完結させた。 それは起承転結の構成が明確で、メリハリのついた見事な舞台だった。 今回、その姿を伝えられたとしたら、筆者としてそれに勝る幸せはない。 【この連載をはじめから読む↓】 「伝説の踊り子」がまさかの逮捕...「男たちの憧れ」を「トコロテン売り」へと変えた衝撃の事件
小倉 孝保(ノンフィクション作家)