中国依存を懸念するメキシコ、米・カナダに倣い「切り離し」模索
北米自由貿易協定(NAFTA)の後継である米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の2026年の見直しに向けて3カ国が準備を進める中、少なくともメキシコの懸念材料として中国が大きな議題になりそうだ。 メキシコの新大統領クラウディア・シェインバウムは、経済省のルイス・ロセンド・グティエレス通商担当次官を通じて、同国の最優先課題は中国からの輸入への依存を減らし、「自国のサプライチェーン」を支えることにあると明確に示した。このような文言は、米政府が掲げる方針と非常によく似ている。こうしたことから、メキシコは米国やカナダとともに中国の3カ国との貿易へのアクセスを制限する用意があることをこれ以上ないほど明確に示している。 中国に関してメキシコは主に2つの問題を抱えている。1つは、中国からの輸入の量が増え、かつ高度化していることで、中国への依存度が高まっていること。もう1つは、商品を輸出する中国企業がメキシコを経由地にすることで、米国が中国製品に課している関税を回避しているように思われることだ。 グティエレスは、メキシコが「アジアから米国への踏み台」となっていることを否定している。だが、メキシコが多くの中国企業を受け入れていることや、メキシコから米国への輸出の増加には中国企業ががメキシコに所有し、ときに操業もしている工場からの製品が多く含まれ、中国からの輸出分も入っていることは否定しようがない。メキシコ政府は、こうした中国系の工場が米国企業が経営するものに取って代わられることを切に望んでいることを明らかにしているが、今日に至るまで実現していない。 関税回避の疑念を横に置いても、メキシコが中国との貿易に依存しているという不安は否定できない。メキシコ政府の統計によると、2015年以降、中国からの輸入は450億ドル(約6兆8775億円)増加しているが、中国への輸出は50億ドル(約7640億円)増にとどまる。メキシコの対中貿易赤字は2015年に650億ドル(約9兆9340億円)だったのが、今年初めには1100億ドル(約16兆8170億円)を超え、ほぼ倍増している。メキシコの輸入の5分の1を中国製品が占め、それらの製品の70%がメキシコで操業する50社に供給されており、これらの約半数が中国企業だ。