テレビの「チャンネル争い」がきっかけで妹を刺殺… 「サブスク」や「見逃し配信」がなかった昭和期の“悲劇” 【戦後犯罪史】
■激しい口論の末、父親の猟銃を持ち出し… 1980年、各家電メーカーはビデオデッキを売り出していたが、まだまだ「一家に一台」となるには時間を要した。 2月3日の夜、徳島県の池田署に「姉を猟銃で撃ち殺した」という110番通報があった。慌ててやってきた警察官が目撃したのは、中学1年生の長男Cが立ちすくんでおり、足元に長女で中学1年生のDが血まみれになって倒れている姿だった。Dは病院に運ばれたが、出血多量で死亡が確認された。 Cの自供によると、姉弟は一緒にテレビを見ていたが、アニメ番組を観たいというCに対し、Dはバレーボール番組が観たいと主張。激しい口論に発展し、怒りが収まらないCは父親の銃を持ち出し、銃口を姉に向けて引き金を引いた。 この日、2人の母親は自ら経営する飲食店で仕事をしており、銃の持ち主である父親は茨城県に出稼ぎに出ていた。父親は銃を分解し、保管庫に入れて施錠していたが、Cは隠し場所を知っており、組み立て方も心得ていたのだ。 実は、父親は過去に近くの田んぼで、自分が手を添える形でCに発砲させていたことがあった。このことが発覚し、のちに父親は銃刀法違反の疑いで書類送検されることとなる。 ここに紹介したのは、家庭内のコミュニケーション不足や、子どもたちのアンガーマネジメントの失敗による事件だといえるだろう。他方、極端な事例ではあるが、昭和の暮らしの中で、特に子どもたちの世界で、テレビがいかに大きく重い存在だったかをよく示してもいる。
ミゾロギ・ダイスケ