これは″自動車版の地面師″だ!アルファード盗難の被害者が語る高級車窃盗手口「目玉抜き」の実態
「3万kmしか走っていないアルファードが、相場より100万~150万円も安かった。今思えば、支払い方法が現金手渡しだったりと怪しい点もありましたが、ちゃんと車検証もあり、名義変更の書類も問題なかったので信じてしまいました」 【写真】恐ろしい…高級車を盗んで逮捕された窃盗団員の衝撃素顔 悔しさを滲(にじ)ませるのは、30代の会社経営者のAさんだ。今年6月、’22年モデルのアルファードを390万円で購入した。しかし、その車は昨年12月に盗難届が出された車だったのだ。にもかかわらず、車検証もナンバーも盗難車のものではない、実在する合法な車のものだったのである。 これは「目玉抜き」と呼ばれる手法で、この手口でワケあり車を騙(だま)されて購入してしまう被害者が昨今増加している。この問題を取材する自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏が解説する。 「目玉抜きとは人気車種の事故車などを安く買い上げて調達し、ワケあり車のものと″差し替え″る犯罪手口です。車の戸籍ともいえる車台番号をワケあり車から外して調達車のものに差し替える。さらに車検証や自賠責保険、ナンバープレートも交換する。調べるには目玉抜きされる前の本来の車台番号を知る必要があります。今回は車台番号を特定するためにさまざまな手段を講じた結果、知り合いのディーラーに頼み、ECU(車のコンピュータ)に診断機を当てることでなんとか番号を特定。さらに運輸支局で番号を照合してもらい、盗難車であることを突き止めました」 車台番号やナンバーを替え、別の車になりすまさせて販売するその手法は、さながら、″自動車版の地面師″といえよう。 ◆自動車版”地面師”を直撃 9月中旬、Aさんは加藤氏らとともに偽装販売の実態を追及し、返金を求めるべく業者と交渉した。対応したのは無精ひげを生やしたガタイの良い中年男性だ。なぜ車台番号を偽装したのか問うと、 「金融車(借金のカタに差し押さえた車)だが、債務者が行方不明になってしまい、正規の手続きでは変更できないから、別の車から移植したんですよ」 と答えた。Aさんが「これでは車検を通せない」と訴えると、業者の男性は、 「普通には通せないが、″闇″で通せる業者がいる。そこを紹介するよ」 と語った。最後まで盗難車と知ったうえで売りつけたことは否定したが、最終的に警察へ通報すると、男性は渋々、その場で購入代金を全額返金。逃げるように去っていった。 警察庁の発表によると、’23年の自動車盗難の認知件数は5762件で、2年連続で増加。なかでもアルファードは前年の2倍以上の700台が窃盗された。これらの一部が売り捌かれていると見られる。 「本来は税関の目を誤魔化し、海外に流すケースが多いですが、検査体制が強化されているのか、最近は国内で販売する業者も増えているようです。Aさんの車はナンバーの発行地域と封印(留め具)の地域が別でした(1枚目写真)。少しでも違和感がある業者は避けましょう」(加藤氏) 緻密化する手口を前に「自分だけは騙されない」という考えは捨てた方がよい。 『FRIDAY』2024年10月11日号より 取材協力:新宿109 KENZO
FRIDAYデジタル