記者が選ぶソフトバンク「9月のMIP」は…バットで声で優勝に向かうチームを鼓舞したベテラン
プロ野球のパ・リーグは、ソフトバンクが4年ぶりに優勝を果たした。担当記者が9月の最も印象に残った選手(MIP=モスト・インプレッシブ・プレーヤー)に選んだのは、同7日に一軍に復帰して優勝に向かうチームを鼓舞した中村晃選手(34)だ。 【写真】ベテラン中村晃が今季初の猛打賞…反撃の突破口開き「いつも通りにできた」
勝って優勝を決めた9月23日のオリックス戦。近藤健介選手(31)の負傷離脱で空いた「5番」で先発出場すると、一回に右前へ鮮やかな先制打を運んだ。2点リードの五回無死一、二塁では犠打を決め、追加点につなげた。小久保裕紀監督(52)はこのバントを試合のポイントに挙げ、「今年スタメンが少なかった中村晃に初めてバント(のサイン)を出した。失敗したら流れが変わるとドキドキしたが、見事成功(させてくれた)」とたたえた。
昨季まで一塁手として4年連続でゴールデン・グラブ賞を受賞した。しかし、山川穂高選手(32)が加入した今季はベンチに控え、代打の出番を待つ試合が増えた。調子は上向かず、打率は2割前後に低迷。8月12日に背中の痛みで出場選手登録を抹消されると、発熱も重なってファームでの調整が長引いた。
一軍へ復帰した9月7日に、チームは今季初めての4連敗を喫した。この日の試合前で優勝へのマジックナンバーは「15」。重圧を感じる若手から声が出ていないと感じ、意識的にベンチの最前列に立って声を張り上げるように努めた。
「僕がやれば後輩もやらざるを得ない。しっかり応援することは大事」と中村選手。17年目のベテランは、強かった年には声でベンチを盛り上げられる選手がいたことを知る。「のびのびとやらせてあげるのが先輩の役目」。翌日から7連勝と勢いを取り戻した。
同15日には通算1500試合出場を達成。スタメンが減っても気持ちを腐らせず、与えられた出番でチームに貢献しようと力を尽くした。ファンもそれを認めるから、本拠地に登場曲が鳴り響くとスタンドがひときわ沸く。レギュラーの頃とは違った勝利の味を「選手としてだけでなく、人間としてもたくさん勉強させてもらった」とかみ締めた。(平島さおり)