2024年、規制における歩み寄りの1年に
行き過ぎに対する反発
SECによるビットコインETF(上場投資信託)申請の却下に対するグレイスケールの異議申し立ては、SECの措置は「恣意的かつ専断的」であるとする3人の裁判官全員一致の判決に帰結した。裁判所はまた、暗号資産に関する規制策定の請願に応じるようSECに要求した。 このような行政機関の行き過ぎに対する反発は、暗号資産業界だけにとどまらない。商工会議所がSECを相手取って起こした訴訟で、裁判所は、SECが自社株買いの開示に関連する規則策定に関して、業界のコメントに対処せず、適切な費用便益分析を行わなかったことで、恣意的かつ専断的に行動したとの判決を下した。 またSECは、新たな私募ファンドアドバイザー規制の制定において、その法的権限を逸脱しているとして、6つの業界団体から提訴された。さらに裁判所は先日、CFTCに対し、ノーアクションレターを根拠を示さずに撤回したのはCFTCの裁量を逸脱していると指摘。さらにCFTCに登録されているある取引所は、プラットフォームに新しいイベント契約を上場させるための入札を恣意的かつ専断的に拒否したとしてCFTCを提訴している。 行政措置に対する異議申し立ては、2024年も引き続き規制当局を制限し、行動を強いることになりそうだ。グレイスケールの判決の結果、SECは、先物ベースのイーサリアム(ETH)ETFを承認。まもなくビットコイン現物ETFを承認すると噂されている。 裁判所がSECに対し、業界からの規制策定の請願に応じるよう義務付けた後、SECは請願を却下することを選択した。
対話と協力の年になるか?
しかし、それに伴うゲンスラー委員長の公式発言は「おそらくほんのわずかな」暗号資産だけが証券では「ないかもしれない」という以前の発言とはかけ離れたものだった。「もちろん、(中略)すべての暗号資産が必ずしも証券として提供・販売されるわけではなく、(中略)法律を遵守したいと望む暗号資産プロジェクトや仲介業者と協力することを楽しみにしている」と述べたのだ。 SECは暗号資産に対する包括的な規制フレームワークを提案するつもりはないが、暗号資産業界の参加者に影響を与えるような、新規制をいくつか提案している。 「取引所」の定義に「通信プロトコルシステム」を含めるよう再定義する提案や、適格カストディアンで暗号資産を保管するよう投資顧問業者に義務付ける提案は、そのまま採用された場合、同様の行政法上の問題に発展する可能性が高い。 複数の業界団体や暗号資産企業は、SECが議会からの明確な承諾なしにこれらの規制を提案したことで、いわゆる「重要問題法理(連邦政府機関が経済的・政治的に重要性を持つ措置をとる場合には、連邦議会による明確な委任が必要になるという原則)」に違反したなどと主張している。これらの規制が法廷闘争によって保留され、政権が交代した場合には放棄される可能性があるという現実は、SECに大幅な譲歩を促すかもしれない。 暗号資産業界の参加者にはまた、2024年、召喚状によって強制されたものだけでなく、規制当局とのやり取りを拡大する理由があるだろう。暗号資産に対する機関投資家からの需要が増加し続けるなか、業界参加者は規制当局との協力が必要となる幅広い商品を提供しようとしている。 例えば、トークン化された現実資産(RWA)の多くは、明らかにSECの管轄範囲内であり、SECの賛同が必要となる。アメリカで暗号資産証拠金取引やパーペチュアル先物の提供を希望する取引所は、CFTCの承認が必要となる。また、ステーブルコインなどの暗号資産プロダクトを提供しようとする、慎重に規制された金融機関は、監督規制当局の承認なしにはそれを行うことができない。 法廷闘争に明け暮れた長い1年を経て、2024年は暗号資産業界と規制当局が(わずかではあるが)互いに歩み寄ることが予想される。これはすべての人にとって、プラスだろう。 |翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸|画像:Shutterstock|原文:2024: The Year of Regulatory Compromises
CoinDesk Japan 編集部