【卓球】パラ選手としていち学生選手として、ひたむきに邁進する若武者、舟山真弘
高校2年で第一人者を下し鮮烈デビュー。パリパラへの道がスタートした
2021年の国際クラス別パラ選手権(現・全日本パラ)、クラス9決勝。高校2年の若手が、第一人者の岩渕幸洋(協和キリン)と激しい打撃戦を繰り広げた末に、初優勝を果たした。会場にいた誰もが、パラ卓球界の新星誕生に驚き、その輝かしい未来を予感した瞬間だった。 それからわずか2年半。世界ランキング枠によりパリパラリンピック出場権を獲得した舟山真弘。現在、早稲田大2年の19歳。「憧れの岩渕さんに勝てたことは、ただただうれしい。これでパリパラへのスタートラインに立てた」と語ったデビュー当時と変わらぬひたむきさを維持しながら、着実な成長を続けている。 4歳で小児がんの一種である「右上腕骨骨肉腫」を患った舟山。手術と抗がん剤治療を受け、1年2カ月入院。利き腕だった右腕の肩関節と上腕骨を切除し、足の腓骨(ひこつ)の一部を移植した。 「サッカーやバスケットボールなどもやっていたけど、卓球が一番おもしろいと思った」という舟山。小学5年から卓球を始め、張永尚コーチの指導を受け、卓球にのめり込んでいく。 そしてパラ卓球選手の岩渕幸洋や金子和也らが在籍した早稲田大に入学したいがために、早稲田大学高等学院に進学。勉学と卓球を両立しながら腕を磨き、高校2年時には憧れの存在だった岩渕にも勝利。ここから国際大会出場、そしてパリパラへの道が始まった。 パリパラ出場権を得るのは、各クラスごとに各大陸選手権優勝者(5名)、世界ランキング枠(8名程度)、世界最終予選優勝者(1名)、そしてバイパルタイト(推薦枠/若干名)。男子クラス10の場合、オセアニア大陸王者不在により世界ランキング枠が1名増え、幸運にも舟山が9位でギリギリ滑り込む形となった。 「3月の大会で格下に勝って優勝していれば、8位で自力通過だったのに負けてしまった。出場権獲得が発表された時は安心感と、自分で決めきれなかった悔しさと、半々でした」。厳しい出場レースを辛うじてくぐり抜けた瞬間の心境は、喜び一色とはいかなかった。 「まずは地力を上げることが第一。パリパラは予選リーグなしのトーナメントなので、シード獲得も重要。厳しい戦いになるけど、そこで勝てる実力をつけたい」 大舞台への切符を手にした舟山の言葉は、どこまでもストレートで、清々しい。小児がんを患いながらも卓球選手として輝く彼の姿と言葉から、多くの人が勇気をもらえるはずだ。