中学吹奏楽部に音楽家が助けの手 環境整備など企業と新団体 静岡市実証事業
公立中学校の部活動改革に合わせて、静岡市を中心にした音楽関係者がNPO法人しずおか音楽文化支援協議会を設立した。部員数が多い一方、指導や活動場所などの課題がある吹奏楽の分野で、演奏家や企業がタッグを組み子供たちの音楽活動を支える。11月から、同市が部活動の代替活動として推進する「シズカツ」の実証事業を担い、円滑な移行に知恵を絞っている。 文化庁が2020年に公表した部活動の実態調査結果によると、吹奏楽部員は中学で部活動に取り組む生徒の1割を占め、全部活動の中で最多。ただ、指導には楽器ごとの専門性が求められる上、音を気にせずに練習できる場所の確保や楽器の適切な管理などが必須で、部活動での技術向上には限界もあった。 同団体は部活動改革によって地域での取り組みが広がった時の影響を懸念し、北山敦康・静岡大名誉教授を理事長として設立。教員OBや音楽家らが名を連ねる。部活動改革に関する文部科学省の実行会議で座長代理を務める北山理事長は「スポーツクラブが続々と参入する運動部に比べ、文化部はビジネスラインに乗っていない」とし、すみやグッディなど楽器販売や音楽教室運営などを行う地元企業も協力する。指導にとどまらず、備品管理や環境整備のための財政支援なども視野に入れる。 静岡市の実証事業として運営を始めたのは、城内中(葵区)と清水第七中(清水区)の教室を会場にした吹奏楽クラブ。神奈川フィルハーモニー管弦楽団で首席トランペット奏者を務めた中島寛人さん(同市出身)ら第一線で活躍してきた音楽家が講師を務める。活動初日に中島さんの指導を受けた大石凛さん(城内中2年)は「普段は先輩から教わることが多かった。唇の使い方などを細かく見てもらい、短い時間でも前より良くなったという実感がある」と充実した表情を見せた。 今後、体制を強化しながら県内の他自治体にも活動を広げる方針。北山理事長は「部活動改革は新たな価値を創出することを目指している。子供たちが生涯に渡って楽しめる活動が見つけられるよう地域一丸で進めたい」と話した。
静岡新聞社