【大学野球】明大・田中武宏監督が最後の指揮「終わってみれば早かったなと」人間力野球を徹底 85年ぶり3連覇の名将
◆東京六大学野球秋季リーグ戦 優勝決定戦▽早大4―0明大(12日・神宮) ラストタクトは散発3安打の完封負け。今季限りでの勇退をすでに表明している明大・田中武宏監督(63)は感無量の表情で両校のエール交換を聴き入った。 「終わってみれば早かったなと。5年間、最初の2年はコロナの影響で、なかなか思うようにできなかった。そこの2年は非常に長く感じた。通常通りになった2022年からは、あっという間に過ぎたなと今、思えば感じます」 舞子(兵庫)から明大、日産自動車で活躍。9年間の明大コーチを経て2020年から監督を務めた。2022年春からは3連覇の偉業を達成。明大では4連覇した1937年春~38年秋以来、85年ぶりで、戦後では初の快挙だった。 監督生活一番の思い出を問われ、こう答えた。 「(2022年の明治神宮大会で)日本一になった時もそうですし、その前の(リーグ戦)初優勝ですね。立教さんにサヨナラで。蓑尾(海斗)が犠牲フライを打ち上げて、堀内(祐我)が帰ってきて。本当に優勝できないんじゃないかなって思いがあったので、『ああ、勝てた』というのは。今思えば、初優勝ですね」 好敵手で同世代の慶大・堀井哲也監督(62)は田中監督をこう評する。「実直で、野球が大好き。あとはスカウティングね。とにかく熱心。どこに行ってもいますから(笑)」。同じ釜の飯を食う寮生活を経て、伝統の「人間力野球」を若者たちに継承してきた。手塩にかけて育てたナインと一緒に臨んだ初の優勝決定戦。負けはしたが、出し切った。 後任には助監督の戸塚俊美氏(60)が来年1月1日付で就任する。田中監督はエールを送った。「根本的にやることは変わらない。『人間力野球』は継続して、続けるものは続け、変えなきゃいけないものは、時代とかそういったものに合わせて変化していってもいいと思います」 去り際に報道陣から花束を渡された。照れ笑いを浮かべ、言った。「花束、似合わないんだよ」。名将が、魂を燃やした神宮を去った。(加藤 弘士)
報知新聞社