公式より人気…幼児が夢中の「アンパンマン人形劇」動画、法的問題はある? 親からは不安の声も
●アンパンマンの権利者が取材に回答
公式側はどのように捉えているのか。アンパンマンのぬいぐるみを使って、オリジナルのごっこ遊び動画をYouTubeなどにアップするには許可が必要なのだろうか。 弁護士ドットコムニュースは、アンパンマンの権利を持つ日本テレビ音楽株式会社に取材した。 同社は権利者各社と確認のうえ「今回ご質問をいただきましたYoutubeの非公式動画に関しましては、恐れながら、個別の事例についての回答は控えさせていただきたく存じます」とコメントした。 一方で、「侵害事案に対しましては、他の権利者とも協議の上適切に対応を行っております」という。決して野放しにしているわけではないようだ。 法的にはどのように考えられるのだろうか。知的財産権に詳しい出井甫弁護士に聞いた。
●「原則」としては動画の公開は権利者に許可をもらう必要がある
――アンパンマンのキャラクター(ぬいぐるみやおもちゃ)を使って、オリジナルの劇をYouTubeに投稿する場合、どのような法的問題が考えられますか。違法とされる場合もあるでしょうか。 一番に検討すべきは著作権と考えられます。 著作権法上、他人の著作物をインターネット上にアップロードする行為は、著作物の「複製」(21条)や「公衆送信」(23条)にあたりうるので、原則として著作権者の許可が必要です。 今回のケースのような「ぬいぐるみやおもちゃ」においても、動画によっては、キャラクターの創作的表現が含まれているとして「著作物」に該当しうるものがあるように思われます。(*) そうすると、これらをYouTube上に映し出す場合には、先ほど述べた原則があてはまり、著作権者の許可が必要になると考えます。 *もっとも、「ぬいぐるみやおもちゃ」は、実用性を備えた美的な創作物(応用美術)に分類されることから、意匠による保護の対象にもなりえます。そのため、著作権との重複保護をなるべく避ける観点から、通常の創作物と異なる「著作物」性の判断基準(例えば、「応用美術」の持つ実用性を切り離してもなお、美的鑑賞性を有するといえるものといえるかどうかを基準とするものがあります。)が用いられることがあり、その結果、「ぬいぐるみやおもちゃ」によっては、その著作物性が否定されえることには留意が必要です。 なお、たとえば、「ぬいぐるみやおもちゃ」が画面の隅に写り込んでいる動画や、「ぬいぐるみやおもちゃ」を紹介するための動画であれば、著作権法上の規定によって、許可が不要となる場合があります(前者については30条の2の「写り込み」、後者については32条の「引用」)。 ただし、今回問題となる「ごっこ遊び」動画においては、「ぬいぐるみやおもちゃ」をストーリーの登場キャラクターとして扱いますので、これらの規定が適用される可能性は低いでしょう。