窪塚洋介&亀梨和也がパブリックイメージについて語る「決めつけられないようにしていた」「イメージに苦しんだ時期もありました」<外道の歌>
窪塚洋介と亀梨和也が“復讐屋”として暗躍する「DMM TV」のオリジナルドラマ『外道の歌』が現在絶賛配信中。低音ボイスで常に冷静さを失わない“静”のカモと、直情型で感情むき出しの“動”のトラという真逆にも見えるコンビが、復讐する対象者に向き合うと、ガラリと役割が変わる姿が痛快なドラマ。表面的なことだけで“沙汰を下す”ことが愚かにも感じられる本作を通して、窪塚と亀梨はどんな思いを伝えたいと思っているのだろうか。率直な思いを語り合ってもらった。 【写真】指先まで美しい亀梨和也 ■窪塚洋介、現場での亀梨和也の姿に「身が引き締まった」 渡邊ダイスケの漫画「善悪の屑」とその続編「外道の歌」を、映画『貞子vs伽椰子』や『サユリ』などの白石晃士監督が実写ドラマ化した本作。全6話を通じて、外道たちに復讐を施していく衝撃的なシーンはもちろん、なぜカモやトラがこの稼業に足を踏み入れたのか…など人間ドラマが展開する。 ――劇中では“静と動”のコンビネーションが痛快ですが、改めて俳優として対峙してみて魅力に感じたところを教えてください。 窪塚:亀ちゃんはすごく自然体で現場にいるのですが、彼の立ち振る舞いや作品に向き合う姿勢を見ていると、ケツを叩かれるというか、こちらも「頑張らなければ!」と思わせてくれるタイプの俳優さんです。 とにかく今回はトラという役へのめり込んでいる感じでした。やることがいっぱいあるんですよ、トラは。セリフも関西弁だし、アクションもある。でもまったく嫌な顔をせずやっている姿に、みんな身が引き締まったと思います。 亀梨:でもそれができたのは窪塚さんのおかげなんです。現場の進行や空気作りみたいなことを、先頭に立ってやってくださったので、僕は自分の役に集中できました。本当に甘えさせてもらいました。 窪塚:出来上がりを観たとき、トラを全うしていたなと素直に思いました。100点を目指す心持ちでやるからこそ、100点以上が出るんですよね。 亀梨:今回僕は窪塚さんとご一緒させていただくことになったとき、現場での立ち振る舞いや、役への向き合い方などを学びたいと思っていたんです。撮影のなかで、メリハリを含めてとても刺激をもらいました。 ――静と動のコントラストは、どのように意識して臨んだのですか? 窪塚:圧倒的に負荷がかかっていたのがトラなんです。芝居も関西弁もアクションもあって。そこを亀ちゃんがよく耐えてくれて、なんなら大変なことも楽しんでくれたことによって、カモを生かしてくれたなと思います。僕はサボっていたわけじゃないんですよ、セリフが少ないだけで(笑)。嫌な顔せずやってくれていて、ありがとうという気持ちでしたね。 亀梨:平常時はカモが静でトラが動なのですが、裏の世界になるとその立場が逆転する。その反転が面白いなと思っていたので、そこは意識しました。 窪塚:日常はトラがフォワードだよね。拷問になると俺がフォワードになる(笑)。 亀梨:その不思議な関係性は面白いですよね。トラに一線を越えさせないカモの思いみたいな…。そこがバディとしての魅力かなとは思っていました。 ■亀梨和也「イメージに苦しんだ時期もありました」 ――現場でお二人はどんな関係性だったのですか? 窪塚:すごくナチュラルだったと思います。僕らはカモとトラみたいな人間ではないので、そこまで役に引っ張られる感じではなかったですが、普通に飯も食いに行ったし、ゴルフも一緒に行ったしね。自然に友達になったような感じです。 亀梨:確かに、先輩後輩というのはカモとトラにも通じるものがあるので、自然でしたね。 ――私刑に近いような形で復讐を行う物語。現代にこうした題材を届ける意義みたいなものをどのように感じていますか? 窪塚:決して復讐をしていいよというわけではないです。白黒つけてしまった方が楽なんだけれど、白でも黒でもなく真ん中にいるって結構大変なんだよねという。それをカモとトラが暴力を伴って投げかけることで、より具体的に視聴者が考えるきっかけになると思います。 文章でどちらが正義でどちらが悪か…なんて読んでも肚落ちしにくいじゃないですか。「俺だったらどうするんだろう」みたいなことを感じてもらえれば、そこはすごく意味があると思うんです。 亀梨:確かに最初は加害者であるキャラクターにすごく嫌な気持ちを持って見ているのですが、後半になると加害者が可哀想に見えてくる瞬間もあったり。人間って視点によって感情の捉え方がこうも変わるんだな…というのは感じます。 窪塚:特にトラの境遇って復讐しているときも大きな葛藤を抱えているよね。 亀梨:本当に人って危ういなと。犯罪や人を傷つけることって絶対ダメなことなんだけれど、それをダメだと言うだけでは何も解決しないし、見えてこない。なぜそういう行動に至ったのか。 もし自分がトラと同じように、母親がああいう状況になってしまったら、どういう感情を抱くのか、今回すごく考えました。本当に一面的にものを見てしまうことの怖さが伝わってくれたらいいなと。 ――お二人がお話したように、表面上のことで判断してはいけないという警鐘が内在した作品だと感じましたが、一方で芸能人というのは、とかく表面的に判断されてしまいがちな職業ですよね。 窪塚:昔から分類されるのが好きじゃなかったんですよ。真面目でもあり不真面目でもある。すごく奇抜なようで普通…みたいな相反するものを提示して、自分という人間を決めつけられないようにしていた気がします。その結果突き詰めていくと「俺は俺でいい」ってなるんです。 人からの評価ではなく、自分の中にいかにしっかり自分を持っているか。そこがブレないと人の評価やイメージってどうでもよくなる。もちろんパブリックイメージみたいなものを大事にして使う部分もあるのですが、芯の部分ではどうでもよくなっていますね。 亀梨:僕の場合はいろいろなお仕事をさせてもらっていて、それを見ている人でイメージが違うかもしれません。でも全部自分なんですよね。 窪塚:亀ちゃんはすごく自然体だよね。 亀梨:基本裏表はないと思うのですが、やっぱりTPOじゃないですが、求められた役割を全うするという意識はあります。僕も25年以上この世界にいさせてもらっていますが、イメージに苦しんだ時期もありました。そこに抗いたいみたいなところもありましたけれど、それを言ったとて、受け止められ方は人それぞれですからね。自分のなかでしっかりしていれば、あまり気にならなくなりました。 ■負の感情も“自身を強くしてくれている”と思って受け止める ――お二人は復讐してしまいたいほど負の感情に支配されてしまったとき、どうやって消化していくのですか? 窪塚:むかつくことはあります。でも基本的にそういう感情に支配されたくないから、負の感情が湧いてくる出来事も、自分を良くしてくれる、強くしてくれるという風に考えています。例えば震災とかコロナとか、自分の力ではどうにもならない大きなことを含めて、起こる結果は、全部自分を強くしてくれるものなんだと。 亀梨:僕も窪塚さんの考え方に近いですね。若いころはぶつかることもたくさんありました。自分と違うものに対して受け止めるキャパもなかったので。例えば、僕はグループで活動しているのですが、昔はメンバーが本番ギリギリまでゲームとかしていると「何やってんの?」なんて思っていたんです。 でも大人になっていろいろな経験を積むと、もしかしたら緊張するタイプで、ギリギリまで本番とは違うことを考えていたいからゲームをやっているかもしれないって考えるようになったんです。それは自分の弱さと向き合えるようになったからかもしれませんけれどね。 ――ヘビーな題材ですが、撮影中はしっかりと切り替えができる方ですか? 窪塚:俺の場合はカチンコで切り替わる感じですね。「ヨーイハイ」でその世界に入って、「カット」で出てくる感じ。もちろんシーンによっては多少助走をとることもありますが、基本はそういうタイプの俳優だと思います。マネージャーとかに聞くと、役柄の影響を引きずっている時もあるとは言っていましたが、自分では意識していないですね。 亀梨:僕は撮影に入る前の方がしんどいですね。役をイメージして自分に取り入れようとしているときって、そのキャラクターと全然違うようなことはしたくないんです。そうすることでキャラクターがリアルになってくるような。現代劇のときは、衣装のままご飯を食べに行ったりします。そうすることで自分のなかでよりキャラクターがリアルになっていくんですよね。 取材・文/磯部正和 撮影/友野雄 【窪塚洋介】 ヘアメイク/佐藤修司(Botanica make hair) 【亀梨和也】 ヘアメイク/豊福浩一 スタイリスト/佐藤美保子