夏の反省を生かした東京Vユースが14年シーズン以来のプレミア復帰!! 後半に逆襲、鮮やかな2発で富山U-18に逆転勝利!!
[12.8 高円宮杯プレミアリーグプレーオフ2回戦 東京Vユース 2-1 富山U-18 Balcom BMW 広島総合グランド] 【写真】影山優佳さんが撮影した内田篤人氏が「神々しい」「全員惚れてまう」と絶賛の嵐 前半は何もさせてもらえなかった。足が動かず、防戦一歩の展開。リードも許し、後半に向けて不安が残った。それでもチームは夏の反省を生かし、積み重ねてきた力で勝利を手繰り寄せた。 12月8日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2025参入を懸けたプレーオフの2回戦が行われ、Aブロックでは東京ヴェルディユース(関東1、東京)とカターレ富山U-18(北信越、富山)が対戦。東京Vユースが後半に2ゴールを挙げて逆転勝利し、14年シーズン以来となるプレミアリーグ復帰を決めた。 「想定していたより、技術もあって嫌な戦い方をしてきた」(DF坂巻悠月/3年)。キャプテンの言葉通り、富山U-18は自分たちのストロングポイントを消すサッカーで対抗してきた。 4-4-2の布陣で組織的な戦い方をしてきた相手に対し、東京Vユースは苦戦。前線からのハイプレスとショートカウンターに手を焼き、セカンドボールの拾い合いも競り負けた。前半24分にはMF折橋蓮(3年)の右クロスからピンチを迎える。ファーサイドに走り込んだMF長谷川岳久(2年)に頭で合わせられ、欲しかった先制点を奪われた。 以降も守備に追われ、武器である小気味良いパス回しは影を潜める。攻撃は左ウイングのFW川村楽人(3年)の単騎突破頼りで、決定機は作れずに前半を終えた。 迎えたハーフタイム。チームは戦術面の見直しを図るとともに、勝負にこだわる姿勢をもう一度確認した。劣勢を強いられた前半を振り返り、坂巻は仲間たちに檄を飛ばす。 「ここで焦っても何にもならない。(夏の)愛媛FC U-18戦と似ている。そこから成長しているところを見せるぞ!」 今から約4か月前。東京VユースはU-18クラブユース選手権のグループリーグ初戦で愛媛U-18に0-1で敗れた。後半の開始早々にリードを許し、焦りの色が濃くなったチームは自滅。最後まで挽回できなかった記憶を掘り起こし、後半に向けてメンタル面の立て直しを図った。 その成果はいきなり現れる。開始50秒だった。ともに後半から投入されたFW仲山獅恩(2年)と右SB小林健(3年)のコンビで局面を打開すると、MF井上寛都(3年)が抜け出してGKと1対1に。冷静に右足でネットを揺らし、試合を振り出しに戻した。 これで息を吹き返した東京Vユースは波状攻撃を仕掛け、相手を押し込んで何度もゴール前に迫る。そして、迎えた9分、ハーフウェーライン手前付近で仲山が相手DFからボールを奪うと、一気に前へ運ぶ。ゴールまで45mほど距離があったが、相手GK仙田琥太郎(3年)が前に出たところを見逃さずにロングシュートを打ち込んだ。見事に決まり、逆転に成功。リードを奪ったチームは本来の姿を取り戻し、ボールを動かしながら主導権を掌握。守備陣も坂巻を中心に粘り強く戦い、相手に付け入る隙を与えない。 夏の反省を生かした東京Vユースが2-1のまま逃げ切り、歓喜の瞬間を迎えた。 「本当にこのメンバーとスタッフで戦えたことが幸せだった。本当にプレミアリーグ復帰だけを目標にやってきたんです。強い年代と言われていたので、僕自身もプレッシャーがありましたけど、本当に周りのスタッフが支えてくれて良い結果を出せた。今はちょっとホッとしていて、選手に本当に感謝しています」(薮田光教監督) 試合後、佐伯直哉コーチと熱い抱擁を交わし、クラブのOBでもある指揮官は涙腺を緩ませた。「ヴェルディらしさは勝負にこだわる姿勢」。そう言い切り、就任初年度となった昨季から三浦知良(鈴鹿)らがいた黄金期の先輩たちを例に出しながら選手を鼓舞してきた。メンバーも心を動かされ、勝利を求める姿勢を徹底。愛媛U-18戦で味わった悔しさをバネにし、最後の最後に大輪の花を咲かせた。 全員の力で掴み取ったプレミアリーグ復帰の権利。トップチームに1年遅れたが、“ヴェルディ”がいるべき場所に戻ることができた。苦しかった時を経て、育成の名門は来季から2種年代最高の舞台に戦いの場を移す。 (取材・文 松尾祐希)