わずか5年で億り人になった敏腕投資家が考える投資戦略
株式投資で1億円以上を稼ぎ出し、個人投資家から目標とされる存在の「億り人」。では、億り人はどのように資産形成を行ってきたのか。その投資の極意をひもとく連載企画が「億り人の『極秘投資術』」です。 今回は「湘南投資勉強会」で個人投資家向けのIR説明会を開催するなど、活発な活動をされているkenmoさん。2012年頃から株式投資をスタートさせ、わずか5年で資産1億円を突破しました。そんなkenmoさんに投資遍歴などについてお聞きしました。 株式投資を始めてみようと思った理由はとてもシンプルです。自分自身の人生設計を考えたとき、勤務先のお給料だけでは、お金持ちにはなれないなと危機感を持ったからです。 お金持ちになるための方法は大きく分けて3つあります。その3つとは、(1)出世、(2)起業、(3)投資、です。私は出世にはあまり興味がなく、起業は自分の性格を鑑みて不向きだと思い、消去法的に投資が残りました。 投資といっても何に投資するかは人それぞれですが、一般的には、株式投資と不動産投資のどちらかが多いと思います。 このうち私が株式投資を選んだのは、不動産投資にはどうしても震災リスクが付きまとうからです。南海トラフ巨大地震や首都直下型地震など、巨大地震が起こる確率は、今後30年以内で70%と言われています。 せっかく投資した物件が巨大地震で崩壊したら元も子もありませんし、株式投資をはじめる前年に東日本大震災があったこともあり、不動産投資ではなく株式投資を選びました。 ■投資からわずか5年で資産1億円到達の「四季報活用術」 投資をはじめた当初は知識がないながらも、ウィリアム・オニールが提唱する新高値投資法を中心にうまくいっていました。新高値をつけた銘柄を一点集中で調べて買い、その銘柄がたまたま当たったという形でした。 ただ、資産が増えていくにつれて一点集中の手法に限界を感じ、自分の視野の狭さに気づかされました。もっと視野を広げ、より多くの企業を知らなければならないという危機感を感じるようになったのです。そこで、『会社四季報』をしっかり活用しようと思いました。 当時SNSを見ると、『会社四季報』を1~2日で通読するような人がたくさんいました。しかし、どう考えてもあんなに分厚い本を1~2日で読破できるはずがない。会社から帰ってきて、寝るまでに使える時間を5~6時間と見積もると、1銘柄をチェックするのにかけられる時間は5秒以下になります。 逆算すると、全部を読むことは不可能です。そこで読まない銘柄を決めてばっさり削り、かつ売上高と利益の伸び、時価総額などを中心に見ることで、届いたその日に『会社四季報』を通読するという手法を編み出しました。 こうした通読法をブログで公開し、四季報勉強会なども企画しました。徐々にルーチンワーク的にこなせるようにもなり、多くの企業を『会社四季報』をとおして知り、視野を広げることができました。 『会社四季報』をきちんと読み込むことで、長期保有する力も徐々に身についてきました。当時は「あのタイミングで売却しなければ、もっと儲かっていたのに」という後悔がよくあり、それをなくすためより腰を据えて、厳選して絞り込んだ銘柄を長期で保有するという投資手法に取り組みました。 結果的に、ペッパーフードサービス(3053)やPR TIMES(3922)、システム情報(3677)、学情(2301)などに投資することで2017年には資産総額1億円を達成することができました。 ■四季報で得られた投資アイデア 実際に、『会社四季報』を読み込むことで「点と点」がつながり「線」になることがあります。直近では、商業施設の企画、設計から監理、施工までを一貫して手がけている船場(6540)です。 この会社は1月29日に業績予想の上方修正を行い、株価はマドを開けて急騰。わずか1カ月足らずで1.5倍にまで上昇しています。会社は、「国内外で業務推進中の大型案件が想定よりも順調に推移」と説明しています。 このとき『会社四季報』を通読していたことが生きました。12月に発売された『会社四季報』では「【デジロー】ディスプレーで回転ずし再現のスシロー新型店舗を設計、施工」とあり、大型案件がこれに関連するものだとすぐに理解できたのです。 ただ、株式投資では大きな失敗も経験しています。投資手法を見直し、絞り込んだ銘柄を長めに持つことにした、とお話ししましたが、このときの成功体験がかえって仇になったのが、2019年末に新規上場したIPO銘柄への投資でした。 ■成功体験が「損切り」の邪魔に 私の目には割安に映った銘柄でしたが、実際はそうではなかったのです。IPO直後で適正な株価形成がされていない時期に、長期投資の論理を当てはめて大きなロットを入れてしまいました。 株価は徐々に下がっていきますが、「こんなはずじゃない」とナンピン買いを行いました。そうこうしているうちにコロナショックがやってきて、大打撃を被ってしまいました。 資産を半分近く減らし、正直、このときは3カ月ほど立ち直ることができませんでした。徐々に「このままでは終われない」という気持ちが芽生え、再び株式投資にチャレンジすることにしましたが、大損したことで、1つ教訓が得られました。 それは、「自分の性格に合う投資手法にしないとダメだ」ということです。そこで、決算開示とチャートを重視しつつ、『会社四季報』の情報と照合したうえで銘柄を選ぶ「順バリ決算モメンタム投資」という投資手法に辿りつきました。 「順バリ決算モメンタム投資」については後編で詳しくお話ししたいと思いますが、今後も私の投資戦略は絶えず変わっていくと思います。最も重要視しているのは、相場が暴落して、極めて高い恐怖とストレスを感じたときに、「“自分自身が”耐えられる戦略か」ということです。 暴落時のストレス耐性や、そのときの投資行動にはその人の性格によってまったく異なります。最もストレスが貯まるときに“自分自身が”耐えられるような戦略でなければ、絶対にうまくいきません。 暴落時にフルポジで臨むかキャッシュ比率を高めるかはその人の性格次第です。そのため、自分に合った投資戦略を立てることが必要不可欠です。最近ではSNSを中心に自分の投資戦略を披露する人も増えていますし、投資勉強会などに参加して学ぶこともできます。 自分に本当に合うものなのか、またうまくいかないときでも心理的に許容できるのかを確かめ、そうでない場合はすぐに戦略を変更するということが、長く相場に居続けるうえで重要なのではないでしょうか。 (構成:鈴木雅光) ※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
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