不透明な夏の甲子園…センバツ中止で夏にかけていた公立最強校「明石商」の苦悩「”ある”と信じてやっていくしかない」
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、第102回全国高等学校野球選手権大会(8月10日開幕)の開催への見通しは極めて厳しいものとなっている。不安を抱えながら前を向いているのが各校の球児だろう。4季連続出場を決めていたセンバツが中止となり夏にかけていた明石商は、そういう先行きの不安を抱えながらも、今夏の甲子園開催を信じて、休校が解除されれば5月7日から練習を再開する予定を立てている。もし、狭間善徳監督(55)のガッツポーズとドラフト上位候補たちの躍動が甲子園で見られないとすれば、あまりに寂しい。 平時なら勇気を与えてくれるスポーツも、心に響くエンターテインメントも、いまや遠いところに行ったように思えてしまう。ほんの少し前からの出来事なのに。 国民的行事となっている甲子園大会も巨大になりすぎたゆえの足かせがある。昨年の参加校は、3700校あまり。無観客で開催されるにしろ、新型コロナウイルスの感染リスクのひとつに移動と宿泊がある。直前まで開催が検討されていたセンバツでは、大会本部が移動用のバスを用意していたというが、47都道府県の代表や関係者が宿舎で集団生活する場は危険なのだ。現在は、政府からの緊急事態宣言が出され、公立高校は休校となり部活動も自粛。26日には高体連が全国高校総体(インターハイ)の中止を決定した。これは痛い。 野球は高体連の管轄外競技だが、開催時期が夏の甲子園とかぶっていただけに与える影響は少なくないだろう。今後は、5月20日に高野連が運営委員会を開き、夏の大会の開催可否が協議される。都道府県大会は6月下旬からスタートする。地方大会の開催の可否は、それぞれの連盟が判断するが、地方によって感染者数にバラつきがあるため、足並みが揃わない可能性もある。「無観客」開催を模索している地方連盟もあるようだが、見えない敵に対しては手の施しようがないのが現実だろう。 指導者も、いまはコロナの終息を願うしかない。昨年春夏の甲子園でベスト4に入り、一躍、全国区になった明石商の熱血漢、狭間監督もその日を待ちわびている1人だ。 「命は大切。平和が一番ですからね。野球は平和があってこそ、成り立つもの。こればっかりはどうしようもないですね」 偽らざる心境だ。 3月11日に決まったセンバツ中止は、ある程度、覚悟していたという。 「1週前に無観客開催の話が出ていたのでやるんかなと思ってましたが、日に日に状況が悪化していた。こんな状況の中ではみんなの命を守ることが最優先。仕方ないです。ただ、かわいそうに思ったのは選手のことです。ベンチ入りを考えていたメンバーのうち4人は経験していますが、14人は初めての甲子園だった。経験させてあげたかったですね」