不透明な夏の甲子園…センバツ中止で夏にかけていた公立最強校「明石商」の苦悩「”ある”と信じてやっていくしかない」
5日後の3月16日から夏の甲子園に向けて練習を再開。「どんな状況になろうとも自分がいまやるべきことをやろう」と、部員を鼓舞し、自分自身も気合を入れ直していたが、政府が発令した「緊急事態宣言」を受け4月8日から休校となり、再び部活動は停止を余儀なくされた。実質の活動期間は20日ほど。この春、入部した36人の1年生はまだ活動ができていない。 「2人ほど、いい選手がいるんです。それを確認できないのは残念」 狭間監督は夏を戦う戦力の確認さえできないのが実情なのだ。 だが、最悪の状況でも常に創意工夫を凝らすのが名将”狭間流”だ。 「兵庫の高校では野球の練習しているところもあるそうですが、うちはそういうわけにもいきませんからね」 70人の部員をLINEグループ分けし、部員は”3密”にならない程度でランニングとキャッチボールなど自主練習で汗を流している。 同時に専属トレーナーの篠原健治さんが作成した筋トレメニューを動画配信。オンラインを使い、「いまできること」に懸命に取り組んでいる。 明石商は全県学区とあって、プロ注目のエース中森俊介は実家のある丹波篠山市に帰省中。キャプテンでスラッガーの来田涼斗は神戸市内で体を動かしている。 保健体育の教師でもある狭間監督は、休校中も、週4日で勤務を続けている。空いた時間に全国から届いた明石商ファンからの激励の手紙に丁寧に返信し、幻の大会となったセンバツの記念タオルを同封したという。ファンに応えるのは、夏の甲子園に明石商の勇姿を見せること。センバツの記念タオルは、その決意表明でもある。 「まぁ、何回も言いますが、できる、できないはこちらで決められないんで。周りの情報を気にすることなく、あると思ってやっていくしかありません。プロ野球はどうなんですか?まぁ、5月7日に逞しくなった部員に会うのが楽しみです。日焼けしてくれてたらうれしいな」 3年連続の甲子園出場をかけた兵庫県大会の日程は未定だが、激戦になることは間違いない。選手層の厚い私学の強豪に比べ、市立校の明石商には、連戦となるとハンデはある。だが、夏の切符を狙っての逆算はできている。2人のドラフト候補を擁し、いま最も注目度が高いチームとあって、5月下旬以降の休校解除を見越して、全国の強豪から練習試合や招待試合のオファーがひっきりなしに舞い込み、すでにスケジュールは埋まっているという。現段階では、練習試合ができるかどうか未定だが、その中には、徳島商、岐阜商とのダブルヘッダーも組まれており、岐阜商・鍛治舎巧監督との「濃すぎる指揮官対決」は実現すれば、高校野球ファン必見の好カードになるはず。やれると信じて全国の強豪は準備を進めている。